エル・スールの作品情報・感想・評価・動画配信

「エル・スール」に投稿された感想・評価

牛丼狂

牛丼狂の感想・評価

3.5
スペイン内戦を背景に、暗い過去を持つ父とその父に興味を持つ娘の物語。
父のダウジングといった趣向からして神秘的なものを感じさせるが、実態はきわめて現実的な内戦というリアルである。
父には、妻のほかに忘れられない女がいるようで、その秘密を嗅ぎ込んだ娘ははじめて母に嘘をつく。そういった少女の幼心ならではの機微がつねに描かれる。
カフェで手紙を書く父を窓の外からじっと見る、それに気づき外に出る、その間、カットは割られることなく内側から窓越しに親子をとらえる。カットひとつひとつが合理的であり象徴的であり美しい。
父から和解を持ち込もうとするも、娘はすでに成長しており関心を持てていないようす。プロデューサーにばっさり切られた後半90分を匂わせたところで物語は終わる。
全体がモノローグ調なので内容がわからないということはない。個人的には『ミツバチのささやき』のほうが好みに合うが、こちらも素晴らしい作品であると思う。
hm

hmの感想・評価

4.7
エリセはエルスールとミツバチのささやきがよく比較されるけど、24の僕にはこちらが刺さった…だいたい10年に1本しか撮らないらしいけど、これを見たら納得せざるを得ない。
最後のランチのシーンを美しいと言わずに何を美しいと言うんだろう、思い出すだけで泣いてしまう…
Melko

Melkoの感想・評価

4.1

このレビューはネタバレを含みます

父と娘の、心の軌跡。

親も、一人の人間なのだということを思い知らされる作品。
「ミツバチのささやき」がとても良く、それより主人公の女の子がちょっと歳上だからどうかなあ…と思っていたが、杞憂だった。
エストレリャも息を呑むほどの美貌。そんな彼女と、彼女から見た、父アウグスティンの物語。

この映画を見て、父アウグスティンに嫌悪感を抱いたり、憤怒の気持ちを持てる人は、心穏やかな子ども時代を送ってこられたのだなあ、と羨ましくなる。
「親」いう人間が持つ心のドロドロした部分を見ずに子ども時代を送れたなら、よほど子どもに対して気の遣える、できたご両親なんだなあ、と、ホントに羨ましい。
父親といえど、一人の人間で、誰にも言えない心の闇を抱えていたりするのかもしれない。

私も父に家を出ていかれた身。疑わしいモノを見つけた時の、「胸が張り裂けそう」ってこういうことなのか、というような胸の痛み。思いを馳せる人が他にいるとわかった時の悲しみ。寝てから夜中に聞こえる、両親の口喧嘩。どれもこれもイタイ思い出。私もあの頃、恨みつらみの日記をつけていたな…ああ、イタイ。
それでも、子どものことは一番に考えてくれていた父。だから嫌いにはなれなかった。ウザイと思うことはあれど。

どこかフワフワして、家出癖のある父アウグスティンも、娘エストレリャのことは可愛がる。娘も父を尊敬している。親子はお互いをちゃんと愛している。
写真館に飾られたエストレリャの写真をボーッと見るアウグスティンの視線でわかる。彼は娘が大好きだった。家出して、帰るはずの汽車で帰らなかったとしても、それでも娘を愛していた。はず。
なのに、お互いの愛情はことごとく噛み合わない。そばに居てほしい聖体拝受。お嫁に行くようなエストレリャの白いドレス姿。なのに父はどこかフワフワと心ここに在らず。
きっと、アウグスティンは誰よりも繊細で、自分の元から人がいなくなったりすることが耐えられない人間だったのではないか。元カノにあてた手紙でバッサリ斬られる切なさ。「生きてるかい?」と送った手紙に、「私は生きてます、それが何?」と返される。女は上書き保存。
そうやって、人との関係や、自分の心の整理を器用にできない人間が、アウグスティンなのではないか。不安をかき消すように吸うタバコ。

そんな父を、「わからない」と言いながら、思いがけず彼氏をはぐらかしたり突き放してしまう、血をしっかり受け継いでいるエストレリャ。そんな成長も、アウグスティンは嬉しかったんじゃないかな。
家の前の並木道。バイクで走る父。同じ道を、自転車で走り成長していく娘。

最後のレストランでの会話。ここでも噛み合わない2人。意を決して切り込む娘。端的に返事が欲しかった。だってもう、過去のことだから。
涙をトイレで洗う父。
時間がかかる。あの時のことを説明するのは、心を解いていかなくてはならないから。「授業をサボれないか」と言う父。断る娘。絶望を見せないよう、精一杯おどけてみせる父。娘は一生後悔し、考えていくのかもしれない。どうすれば良かったのか。当たり障りのない会話で仲良し家族を演じるより、心がえぐれてでも、本音でぶつかれば良かったのではないか。ボロボロにはなるが、闇を抱えたまま、あんなことにはならなかったのではないか。悲しすぎる。レストランを後にするエストレリャを見送る窓辺の父に、涙がこぼれた。
大切な家族を傷つけたくないから秘密を葬りたかった父と、傷つき泣きながら、代わりに秘密を葬ってあげた娘。悔しさと、怒りと、悲しさで握りしめる電話の領収証。
死ぬ前に電話したのは誰なのか。きっと…
今から彼女にできることは。エルスールへ、向かう。

元は3時間あって、後半はエルスールへ行ってからの彼女の話だったらしいが、バッサリ半分で切って、これからの彼女を想像させる終わり方だから良かった。
この監督は、俯瞰で見せるところと人物をアップで見せるところの画面切り替えが非常に巧みで、画に見とれていると字幕を読み飛ばしてしまい、何度も巻き戻した。
景色込みの人物を引きに引いた俯瞰のショット、舞台芸術のように人物の顔だけライトを当てる手法、光の少ない中での人物の写し方等、、とにかく画面が美しい。うーん、どのシーンも絵ハガキがほしい。

終わってからすぐ、再度最初から見た。
全てを見た後、冒頭のバイクに2ケツする父と娘を見ると、涙が止まらなかった。
リュミエール=光、『ミツバチのささやき』『エルスール』に出てくる列車が、映画誕生期の記憶である事にさして意味はなく、光と影によって純然たる映像が立ち上がってくる点に、紛れもなく存在するであろう正統な血筋、リュミエールからエリセ、ゲリンへと繋がる系譜を強く感じる。
とんでもない傑作であることは間違いなく、同時に、今まで観た映画の中で最も美しい映画の1つでした。
ropi

ropiの感想・評価

3.8
どこか謎めいた父親を追いかける少女。魔術師のような父親の振り子、少女の指に煌めく六角形の指輪。一見メルヘンチックな世界だけどどこか怖さや危うさを感じさせる。初見は映像重視で。「ミツバチのささやき」とともにじっくり観直したい。
レンタルDVDにて鑑賞
2020年 402本目

主人公の視点を主にして父親の人生、そして主人公の思いに迫っていく作品。
元は3時間の映画だったそうで後半の90分がカットされています。そのため終わり方がかなり突然です。
秘密を臭覚で表すシーンがあったり字幕が独特でした。また個人的に登場人物が身にしている服装がかなり好みでした。
静かな映画ですが要所要所で主人公の考えが述べられているので見やすい映画です。
終盤父親が主人公の学校の合間に昼食に誘うシーンがあるのですが自分の秘密を話すため「次の授業をサボれないか」と聞き断られてしまい自分の秘密を話せなかった場面は切なく感じました。
なご

なごの感想・評価

3.8
前作に続き、”映画”がひとつ物語上のフックとして働く
近しい存在の分からない部分、知りたいけど知ってはいけないような、、あのもどかしさを少女時代から引っ張って生きていく、周りに漏らすことはしない、そんな彼女の父への心底の愛を感じた
親と子は遺伝子レベルでの繋がりはあっても、種としては各々別個の存在なんやと痛感した。聖体拝受のシーンで見た繋がりと、グランドホテルのシーンで見た断絶。物語を通して強調されていた光と影が、相反する繋がりと断絶という事象を際立たせる。こんなにも美しくて悲しい物語をほかに知らない。もっとも近しいとされる親子関係ですら、その心と心の間には狭くて深い溝があるんだなあ。わかることはわからないということだけだなあ。
MikuSato

MikuSatoの感想・評価

3.5
静かで雰囲気が最高
戦争は終わった後も人々を苦しめていくのが分かる映画
「ミツバチのささやき」がそこまでハマらなかった自分にはあまり楽しめず。独特の温もりを持ったショットとそのミニマルさは前作同様、いやそれ以上に魅力的なのだが、如何せんストーリーがしっくりこなかったのである。もう一度落ち着いて観たい。
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