Rita

さくらももこワールド ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌のRitaのレビュー・感想・評価

4.4
わたしの好きな歌。

まる子は音楽の授業で習った「めんこい仔馬」という歌を気に入る。「わたしの好きな歌」をテーマにした図工の課題を通じて、家族や友人、静岡で出会う絵描きのお姉さんとの触れ合いを描く。

作者さくらももこ先生は「めんこい仔馬」の替え歌しか知らなかったが、大人になって歌の意味を知り「涙をこらえて笑顔で万歳するまる子」の姿が浮かんだことがこの物語の大きな着想となったそうです。

お姉さんをお嫁に送りだすまる子は、まるで「めんこい仔馬」の歌のようで恐怖を憶させる。夢と愛、人生の分岐点がこんな形で決まるなんて、ラストにモヤモヤしてしまうけどアニメで見やすいのもあってとても好き。センチメンタルな哀愁が漂う世界観とさくらももこワールドに惹き込まれた。

さくらももこ先生は、"大切な人との永遠の別れ"を作品として残したかったのか、または当時の女性の幸福という概念をストレートに伝えたかったのでしょうか。作品の真意は奥が深い。昭和の女性像、価値観を皮肉だけどアニメでぼやかして描かれている。

お姉さんの恋人が愛より夢を選ぶのかと言っていたけど、あなたは夢と愛を両方手に入れようとしてるじゃないかと思った。女性の理不尽さ。

大滝詠一の「1969年のドラッグレース」から不思議な浮遊感を感じた。図工の課題で、花輪くんのインドネシアの歌謡曲ダンドゥットを選ぶ小学生とは思えない独特なセンスが面白い。はまじの好きな歌「買物ブギー」のドスの効いた大阪弁の歌とアニメーションの口の動きがよく合っていて好き。ビートルズのパロディのはまじ関口ブー太郎メンバーのTHE BEAKUESも良かった。

まる子がお姉さんの描いたお姫様と竜の絵に夢中になる。この細野晴臣の「はらいそ」のシーンでは、すでに"別れ"を暗示していたというのを知り切ない思いが溢れる。このシーンは、悲しい気持ちになるけどファンタジックで夢の中のようで好きです。

まる子がお姉さんと水族館に行ったとき、綺麗なお姉さんを見て「あたしはおねえさんが泡になって消えちゃうんじゃないかと心配で魚を見るふりをして何度もお姉さんを見てたよ」という言葉がすごく好き。夕日が沈み、夕焼け残る夜の空を魚に乗って漂うシーンに「星を食べる」という曲が夢心地のようにうっとりする。

知らない女の人の家に上がる経験って小学校のとき実際に私もあったからもも子の気持ちに何となく共感した。知らない女の人の家に行ったって話をして親には驚かれたけど、お姉さんは悪い人じゃないって一生懸命説明したような記憶もある。何回かお家に遊びに行ってたけどいつの間にかもう行かなくなってた。お姉さんにはお姉さんの用事があるって考えるようになったからかな。

https://youtu.be/U7RBe8dBGAo
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