おかだ

用心棒のおかだのレビュー・感想・評価

用心棒(1961年製作の映画)
4.9
世界で1番面白い映画


昭和日本映画特集、黒澤明監督の4本目はおそらく世界で1番有名な邦画の大傑作「用心棒」。
世界のクロサワ、そして世界のミフネとしてその名を知らしめた問答無用の娯楽アクション大作である今作。

物語自体は昔からよくある勧善懲悪の時代劇がベースとなっているが、「隠し砦の三悪人」に続くシネマスコープのワイド画面を存分に活かした迫力ある映像や斬撃の効果音など黒澤監督のこだわりが炸裂した一本に仕上がっている。


あらすじは、対立するヤクザの二大勢力が幅を利かせてゴーストタウンと化した宿場町にフラリと現れた三船敏郎演じる浪人が、町を救うべく孤軍奮闘するというもの。

という訳であらすじ自体は典型的な西部劇という感じで、イメージしやすいところでいくと「シェーン」みたいな。


それにしてもまず何より、パッケージにもなっているように渋い表情で顎を触る三船敏郎のカッコ良さよ。
三船敏郎、まあ当然どの作品でもカッコいいんですけど、今作の主人公が放つオーラはまた別格やったな。
また渋くて強いだけでなくて、飄々として掴みどころの無い魅力的なキャラクター。
ヤクザの抗争を煽っておいて高台から眺めてみたりとかね。
それからラストの「あばよ」から立ち去っていく後ろ姿は今年で1番痺れた。

悪役もそれぞれキャラが立っていて魅力的。
特に丑寅の亥之助と卯之助よね。
コメディリリーフとしての亥之助は、中でも挑発に乗って三船敏郎が入った棺桶を知らずに担いで歩くシーンが最高。
また、卯之助の方はビジュアルからまず面白い。
この時代にマフラーを巻いて拳銃を持った悪役って。キャラが立ちすぎている。
初登場時のBGMも大仰で笑ってしまう。


最後に撮影と演出。
撮影は「羅生門」でもタッグを組んだ宮川一夫。

先述した横長画面の幅と奥行きをフル活用すべく人物を多めに配置する構図は、「七人の侍」でも用いられたパンフォーカスを巧みに使って作られているらしい。
西部劇を意識して、からっ風が吹き荒ぶ町の風景も見事なもの。

1番の見どころである殺陣も当然素晴らしくて、個人的には小屋に監禁された女性を救うべく6人の見張りを瞬殺する、スピード感溢れるシーンが大のお気に入り。

かと思えば、丑寅に監禁された三船敏郎が屋敷から脱出するスリリングなシーンもあったりして、そうか、そういえばこの監督はサスペンスも撮れるんやったなと感心させられたり。


という訳で、前作がその難解さから興行的に失敗し、後がなくなった黒澤監督が本気で作り上げた面白さ全振りの娯楽アクション大作は、面白くないわけもなく。
物語、撮影、演出のバリエーション、キャラ造形、全てにおいて文句無しの大傑作でした。

ちなみに個人的にはいまだに「七人の侍」がベストなんですが、あっちは4時間近くあるのがなぁ。
そこも考慮すると1番オススメできるのはこっちかもしれない。とにかくめちゃくちゃ面白い。
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