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俺たちに明日はないのTPのレビュー・感想・評価

俺たちに明日はない(1967年製作の映画)
4.1
★1987年に続き、2回目の鑑賞★

 1930年代前半にアメリカ中西部で銀行強盗や殺人を繰り返した実在の強盗団の主犯格であるボニー・パーカーとクライド・バロウを描いた作品。それまで映像として描くのはタブーとされてきた内容を多く含んでおり、映画史の中で重要な位置づけにある。

 正直、始めの30分程度は何という変哲もない犯罪映画風内容(ベイティが非常に目が小さいため表情の変化に乏しいことも要因の一つ)に感じてしまう。
 しかし、クライドの兄夫婦(ハックマンとアカデミー助演女優賞受賞のエステル・パーソンズ)が仲間に加わってきてから、複雑な人間関係も描かれつつ、どんなにあがいても脱出できない蟻地獄的な人生が浮き彫りにされていく展開になって、当時としてショッキングな内容だったことに加え映画としての出来もやはり秀逸と感じる。

 いつも思うのだが、フェイ・ダナウェイという女優はちょっと美人ではあるが特徴的でもなく、女性的魅力にあふれているわけでもない。それでも映画の役柄に嵌まってくると何とも言えない役者的魅力を感じるようになるのが非常に不思議。
 本作でもそんな彼女の持ち味は全開だし、やはり当時ほぼ無名だったジーン・ハックマン、アカデミーをとったパーソンズというしっかりした役者が役を固めていることも、本作を単なる歴史的存在だけで語られる作品ではないレベルに引き上げている。

 なお、実際のクライド・バロウ率いる強盗集団は、武装も本格的な完全な犯罪集団であって、本作で描かれるような家族単位の犯罪グループではなかったのだが、それはそれとして、本作ではバロウ兄弟のみに焦点を絞ることで、犯罪に手を染めて抜け出せない普通感覚の犯罪者のやるせなさが切実に伝わる内容となっていて、史実に忠実でないことは何ら映画の評価を下げるわけではない。
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