あるてーきゅう至上主義者

カナリアのあるてーきゅう至上主義者のレビュー・感想・評価

カナリア(2004年製作の映画)
4.5
もしも主演のキャストたちと同じくらいの年齢のときに、リアルタイムで観ることができていれば、もっともっと大切で大好きな映画になっていたかもしれない。
そう感じる作品はたくさんあるけど、この映画はまさにその代表格。あらゆるものから見捨てられて、たゆたうしかない、しかしそれでもどうにか過去と決別して、自分の足で自分なりに歩んでいこうとする。これはまさにそんな映画だ。

題材はオウム真理教と地下鉄サリン事件にとられている。しかし、この映画では「組織」ではなくその中で生きる「個人」にフォーカスが当てられている。そしてその中でもさらに家族からも見放された少年が主人公だ。彼が出会った少女もまた、あらゆるものから見放されていた。そのふたりが寄り添い、傷つけあいながらも、お互いの心を少しずつ蘇らせていく。

キャストはみな素晴らしいが、一番はやはり谷村美月だろう。抑揚の利いた、しかし内側に強い衝動を秘めた役を完璧に演じている。少年少女たちに襲いかかる現実が容赦することはない。しかし、だからこそ、ほんの少しだけ光が射し込んだように思えるラストが素晴らしい。
これはもう、破格の面白さをもつ傑作である。