おくむらひ

ユージュアル・サスペクツのおくむらひのレビュー・感想・評価

ユージュアル・サスペクツ(1995年製作の映画)
1.0
アナロジー等をさっさと解いて主題が何かを見極められれば何についての映画なのかを理解できる。そうすれば後は頭を使わず映像やそれが繋がっていく瞬間、演出を純粋に楽しめる。という鑑賞方法を取りがちなので、どんでん返しを核とする脚本でしか成り立ってない映画はやはり全く受け入れ難い。
騙し絵的な複雑な筋書きを楽しむためには、105分間の内の出来事を逐一覚える努力が求められる(短いからまだマシだが)。上映時間中ずっと気を張って、画面から伏線らしき物をいちいち拾い続ける動体視力とそれを溢れないように頭の中で整理し続ける記憶力と根性なんて、みんなどこで鍛えたんだ…。僕はそういう頭の使い方は疲れて嫌だから、主題を押さえにいくんですよ。その方が実は楽だし、理解も深いし、鑑賞者としての主体性も持ちやすい。この作品の場合は主題らしきものが無く、代わりに脚本家の芸をありがたく頂戴するだけのもの。その時点でもう嫌な気持ちになるんだけど、直ちにそれが悪いと断定できるものではない。映像に魅力があれば主題がすっからかんでも何でも大抵は大丈夫な訳だし。しかし、この作品の撮影と編集は物語の熱量やスピードといまいち接続が悪く、ドライブしていかない。与えられた役割と言えば、せいぜい脚本側の説明を視覚的に補助するプレゼンテーション資料としてのもの。脚本に従属し切っており、本当につまらない。まぁ良かった箇所は3人以上が会話するときや面通しのシーンだが、コーヒーカップが落ちるカットを3回も見せなくて良いし、ズームもパンももっとメリハリつけて使おうよ。画質もチープだし。もっと映像を楽しみたかった。これだったらTVドラマでも良い。映画である必然を全く感じない。
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