Asro

砂の器のAsroのレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
5.0
人間の心に潜む闇と光を田舎の文化や美しい景色と共に炙り出した最高傑作。

日本の美しい風景、今ではなくなった昔の山や緑とそこに住む人々、そこの感覚が伝わってくる。その感覚にはどこかノスタルジックで没入していける力が感じられた。
自分が何も知らない外国人のような気分を味わった。同じ日本のはずなのになんて美しい風景なんだと。人々の交流や日本の夏という季節、食べ物、昔だからこそ新しいみたいな。
これもまた古典を知らないからこそ味わえた妙かもしれない。
でもこの映画にはやはり"調和"が上手いこと機能していたのだと思う。それも実は繊細に。
そこの場所性にとても意味のあるミステリーだからこそ、そこにある物、自然、人々の調和に力点があったのだと思う。
何事もない日常や自然なのに、その全てから意味を感じ取ることができる、その力の大きさをここまで感じられる映画に出会えて良かった。

あと役者が素晴らしかった。全員良かったが加藤 嘉さんのハンセン病患者の役が超絶良い。
あの目、生きている人間のはずなのに世界との縁を全て切り取られてしまったかのような、あの目。
一度見たら忘れられない、なぜ加藤さんはあそこの境地まで行くことができたのか?
きっとハンセン病を演じるにあたって生半可ではダメだと思ったのだろう。しかしそれにしても圧が凄かった。尊敬する俳優の1人になった。
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