ヒリテ博士

砂の器のヒリテ博士のレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
3.8
もはや戦後ではないって宣言で口火を切った高度成長期、社会は一応光に向かって躍進していったでしょ。冷暖房がないせいで夏は暑さでへばるし、寒くて厳しい冬は凍えるけれど、インフラもばんばん整い始めて、そうやって統制され始めて、安全な社会になったらしいじゃん。

事件捜査を通して、そういう時代の潮流から零れ落ちた日陰者がどう生きたか、その足跡を辿るわけよ。それがいいんだわ。
光に向かってく時代が過ぎ去り落ち着いて、そこではじめて影の部分に目を向けるわけよ。
でも、今更そんなところに目を向けたってもう手遅れで、哀しいだけなんだけども、殺人があったから解明する為に目を向けなきゃいけないわけでさ。

繰り返しになるけど、本当にそういう風に生きる他になかった、時代の影に追いやられた人間の人生を辿るってのがいいわけよ。

しかもこの映画、ものすごく良く出来た構成。素晴らしい。