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砂の器のnovooのレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
3.0
日本最高峰の映画、邦画の名作との声が高い作品。

松本清張の推理小説が原作になっているが、推理映画が観たい人は辞めた方がいい。物語の序盤から犯人は知らされているも同然だ。

その犯人がわかりきった上での捜査を物語の前半で観ることになるため、緊迫感のない映画と感じる。

物語の後半に犯人の生い立ち、犯行に至るまでの流れが回想であるが、刑事の今西がちょいちょい語りで現在の場面に戻すため、うまく回想の中に入れなかった。

だが、この後半こそが物語の主たるものであり、強いメッセージが込められている。昭和初期のまだ近代化されていない日本。田舎の原風景。その厳しい自然の中で旅をする元浦親子。千代吉の子を思う心、親子の強い絆。らい病という人権を無視した差別。理不尽な社会に対する悲しみや怒りが伝わってくる。

ハンセン病とは何か。謂れ無き差別を受けた人がいる事を後世に伝える事にもなっている。そういった意味でこの作品は素晴らしいと思う。
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