カラン

誰かに見られてるのカランのレビュー・感想・評価

誰かに見られてる(1987年製作の映画)
3.5
『エイリアン』や『ブレードランナー』の後で、リドリー・スコットが既に大物になっていた時期なのだろう。制作総指揮も務めている。1300万ドル近く予算をかけたが興収は1000万ドル強で不発に終わった。

字幕も外している。いつも槍玉にあがるあの方だろうか。

“Someone to watch over me”という原題は犯人に狙われる女(ミミ・ロジャース)を警護し、愛するようになる警部補(トム・ベレンジャー)のことを指しており、ガーシュウィンの曲に乗せて甘いバラードが2回かかるくらいで、「誰かに見られている」というのは窃視や監視をほのめかしているようで変である。そもそもwatch overというのは「誰かを見守る」とか「誰かに気を配る」の意味である。本作は裕福な女のボディ・ガードをすることになった新任の警部補が女に恋にしてしまい、警官時代の元同僚であった妻との間で揺れるという話である。

立派だなと思ったのはミミ・ロジャースで、最初はお高くとまった女で美しくもなかったが、トム・ベレンジャーに恋するとビジュアルが魅力的になる。顔が変わったように思えた。またラストシーンで人質交換のやりとりを闇の中のセット撮影で描いたのだと思われるが、カットの間で闇に浮かぶクロースアップは成功していると思う。

この映画がいまいち面白くない理由は、犯人が場当たり的な行動をし、賢さも強さも技量もなく、ただ悪いやつというだけなのだが、いつまでも捕まらないで映画の時間を稼いでいることである。素朴で善良な元警官の妻であるロレイン・ブラッコと、恋に落ちていくミミ・ロジャースの間で、真正面から揺れるトム・ベレンジャーをラブストーリーとして、率直に、実直に撮れば良かったのではないか。

本作はスティングの甘いジャズナンバーを配して、エンパイアステートビルの空撮で尖塔をなんども旋回しながら、ニューヨークの車列の光の線をロングショットで捉えて始まった。リドリー・スコットはゴアなしで率直にストーリーを紡ぐことができないのであろうか?逆に本作を邦題のようにサスペンスとして考えるならば、惨敗した興収が示す通りの駄作となるだろう。

レンタルDVD。55円宅配GEO、20分の18。
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