Sono

ショーシャンクの空にのSonoのレビュー・感想・評価

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)
4.9

安堵と歓喜に胸をなでおろし、一瞬「あーめでたし」という気持ちになる。そして残る不快感。

主人公が初めて牢獄で食事を時に食物の中から小さな虫が出てきたシーンを思い出した。虫を取り除けば食べられるが、虫がいたという過去は変わらない。どんなに大金を手に入れ、正義がなされ、自由を手にしたとしても、彼の脱獄生活がなかったことにはならないのだ。

”免罪によって約20年間も収監された男性”の話を、
私達は感動の物語として他人事のように眺めるが、
もし自分だったら…と想像することが大切である。
人間はいつ、理不尽な嫌悪や罪を向けられるかわからない。
もしかしたら、自分が警察の立場になっているかもしれない。
映画を観ていて気付いたのは、警察も囚人も自分たちの現状や行動に何の疑問を抱いていないことだ。警察は囚人に人間的価値を見出していないがゆえに容易にその命を奪い、囚人は自分たちの命は軽んじられても仕方がないと諦めている。しかし、本来人間の命に優劣はない。警察でも間違いは犯すし、囚人にも優しい心はある。それでも、ある人は罪を背負い、ある人は罪人を裁くのだ。
しかし、”他人は自分の鏡”という言葉にあるように、あなたがだれかを裁けば、あなたも誰かに裁かれ、あなたが罪を背負えば、誰かも罪を犯すのだ。
アンディが希望を失わなかったのは、誰も絶対的な力は持たないと確信していたからだと私は思う。彼は不完全な人間も完全な人間もいないと知っていたからこそ、所長をだますことができたし、トミーに勉強を教えたのだろう。
この映画は、人間の残忍さに潜む弱さ、絶望に眠る希望がどんなものかを示すだけでなく、人生の本質は何か考えさせてくれる。
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