いとっ亭

虹をつかむ男のいとっ亭のレビュー・感想・評価

虹をつかむ男(1996年製作の映画)
4.7
 山田洋次監督の映画は食わず嫌いだけど、これだけは大好き。
劇中に数々の名作が出てくるが、それぞれがそれぞれの場面でしっかりと意味を持っており、特に西田敏行が「雨に唄えば」をオマージュして踊るシーンは恋愛とミュージカルの親和性の高さを感じる。短足胴長の日本人でも画になるんだねえ…。
 かく言う私も映写技師としての経験があり、フィルムが流れている場面や、田中邦衛演じる常さんの後ろ姿にはグッと来るものがある。残念ながらフィルムという文化は今後衰退していくが、この作品を含め「イングロリアス・バスターズ」、「ニューシネマ・パラダイス」、「地獄でなぜ悪い」等の映画の中ででもフィルムと出会える事は嬉しい事だ。
 何よりこの西田敏行演じるかっちゃんこと白銀活男がいい映画オタクだ。映画を紹介するとき、誰よりもイキイキと楽しく話す。こっちまで映画の話をしたくなってくる。多分、今の若い世代はミニシアターすら知らず、日曜洋画劇場で淀長さんが映画の紹介をしていたのも知らず、歳を食っていくと思う。ただ、映画から離れていくのは何も現代の問題ではなくて、劇中でも映画を久しぶりに観た人が多く登場する。そこで、かっちゃんが言う「身がつまされる」経験を映画を通して体感して欲しいと、息巻くかっちゃんを見ながら首を縦に振っていた。全ての映画は経験であり、やっぱりその映画を上映する場所である映画館はミニシアターを初め、減っていって欲しくない。パチンコとか飲み会とかパンケーキとか一回だけ我慢して、映画に行ってみよう。意外とハマるから。