ねこたす

コラテラルのねこたすのレビュー・感想・評価

コラテラル(2004年製作の映画)
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トム・クルーズ祭3本目。
改めて観返すとずいぶん印象が違うことに気付く。

トム・クルーズ演じる殺し屋を乗せてしまったことから、一連のお仕事にコラテラル(巻き込まれ)するタクシードライバー、マックス。
映画の多くの時間がタクシー車内で進むのだが、LAの街と撮影を工夫し飽きさせることはない。

何よりサスペンスものとして、交わされる会話がとにかくかっこいいのだ。ダーウィンの進化論、60億の人口、ヒロシマ、マイルス・デイヴィス、ハンプティ・ダンプティ。

日に多くの人と関わり、会話を交わす。感じの良い女性と楽しくお互いをさらけ出し、一日を終えるつもりだった。しかし、これは想定外だっただろう。

空から降ってきた死体にびびりまくり、おそよ協力的とは言えないマックス。ヴィンセントはなぜ彼と一晩の仕事を共にしようと考えたのだろうか。

最近の映画でジョン・ウィックを思い出すような胸と頭をしっかり撃ち抜く殺害スタイル。教養を思わせる会話の引き出し。ルーティンを外れる行動を嫌がる。人を躊躇なく殺せる境地に至っている人間を描写するのに、大変説得力がある。

そんな人間からすると、自分に協力的な無能よりは有能な人間を選びそうだ。次の目的地までの所要時間を賭け、見事に的中させたマックス。それで目を付けられるのだから、なんと運の悪いことか。

ジャズを聴きながら、なんだ少しは人間らしいところがあるなんて思ったら大間違い。休まる時間はない、気を抜くなと観客側にも警告するようであった。

上司への高圧的な交渉術や、自分の母への接し方。車内で交わされる会話が段々とパーソナルになっていくと、マックスもヴィンセントのやり方を自然と身に着けていく。
まさに"ダーウィンの進化論"だ。

DEAやFBIも動き出し三つ巴の状態になると、それまでクラシックやジャズといった静かな音楽が流れていたのが一変、ロック調になる。また、韓国系のクラブで流れているダンスミュージックが、ちゃんと歌詞が韓国語なのもしっかり作りこまれている。

せっかくの希望も打ち砕かれ、だんだんと自棄になっていく。言葉のボクシングのような応酬。お互いに痛いところを付く。しかし、夢のことだけは馬鹿にされたくなかった。いや、図星だからより感情的になったのだろうか。
思いもよらない行動で、この日マックスは初めて主導権を握る。

殺人の加担をしてしまったのも心が弱かったからだ。とっとと捕まり諦めてしまおうと思ったが、そこには最後のターゲットが映し出される……。

主人公とヒロインが黒人。狙われた情報屋やDEAはヒスパニック。韓国系の男も登場する。しっかりとLAの人種バランスが反映されている。
そんな多様な人が集まることを皮肉ったような電車のたとえ。フレーズにまた意味を持たせた閉じ方もまたオシャレなのである。

地味に出演俳優が豪華すぎる。あれ、この声聞き覚えあるぞとそこにはハビエル・バルデム! そして、冒頭の仕事道具受け渡しの男は…。
カメオ出演ではあるが、その特徴的なしゃがれ声を聞くとなんだか大変なことが起こりそうだと身構えるには十分なのだ。