昼行灯

怪談佐賀屋敷の昼行灯のレビュー・感想・評価

怪談佐賀屋敷(1953年製作の映画)
3.7
結局化け猫は復讐を果たさず、殿側の大団円のような結末になってる。ラストは家老たちが整列した様を引きのカメラで撮ることで、物語に再び秩序が戻ってきたことが示される。これは映画史における典型的な家父長制の構造というべきか、、

化け猫物とは言うものの、怪異が怪猫と幽霊の二手に別れているところが物語をややこしくしている。殿への恨みならば、なぜ両者は協力しないのか?また、恨みを果たすべきは殿ではなく、家老相手ではないか?など物語性に一貫性はあまりないやも、、

入江たか子の二面性が恐らくこの映画の醍醐味なので、物語はあまり重視されていないのかも。美しい奥方から醜い化け猫に変化する時子は、華族のお嬢様から女優へ、花形から貧乏役者へと凋落した入江たか子自身の境遇にも重なる。没落がスター性として輝くとはなんとも皮肉

とはいえ、入江たか子の身体性には目を見張るものがある。これ、スタント使ってないとしたら、どうやってやってるのか分からない。病気したあとの中年女性がバク転とかできるものなのか?おばあさんの化け猫も本当に人間とは思えない身のこなしようだった。操られる人間と化け猫の演技の呼応もばっちりだった。ニヤリとゆっくり口角をあげながら笑う様子も、今まで入江たか子はこんな役をしてきたわけないだろうにと思うほど決まっていて、さすが大女優という感じ。

怪異の演出としては、消える行灯、障子の影、魚を食べる、油を舐めると怪猫もので使い回されてきたものを反復してるだけでつまらなかった。この映画はやはり入江たか子の演技にかかってるのではないか。鈴木澄子と比べるとその美しさについてあまり注目されてない感じはあったが、それは年齢的な問題なのかな?
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