おかだ

ライフ・アクアティックのおかだのレビュー・感想・評価

ライフ・アクアティック(2004年製作の映画)
4.6
どうしようもないから観てしまう


ウェスアンダーソン特集の3作目は、デタラメ船長の海洋アドベンチャーっぽいものを描いた「ライフアクアティック」。
とても好きな作品です。


海洋探検家としてドキュメンタリー映画を製作する主人公スティーブズィスーを演じるビル・マーレイらをはじめとしたお馴染みのキャスト。
頻発する左右対称の構図や、船を両断してまで見せてくれる横スクロールの長回しなどのお馴染みの撮影。
ワガママ主人公が迷惑をかけ散らかしながらも家族の再建を目指していくお馴染みの脚本に、これからお馴染みとなるストップモーションアニメで描く愉快な海洋生物の数々。

それらが作り上げるどうしようもなくポップで愛おしい世界観が、どうしようもなくツボにハマってしまう。


実在したフランスの海洋学者であるジャッククストーをモデルにしたという、ズィスーという主人公。
まずはそのズィスー率いる海洋探検隊のルックが面白すぎて憎めない。
お揃いの赤いニット帽にお揃いの水色パジャマを身に纏ったおじさん達がゾロゾロと散歩する絵面はまるでウィリーウォンカのチョコレート工場。

たびたび船の断面を映したドリーショットで見せるズィスーの船内横断シーンも飽きない。

あとは珍しく織り込んできたドンくさいアクションシーンの数々も良いアクセントになっていたし。

それからまるでスイミーの世界観で見せるフィクション海洋生物の数々も楽しく。
かと思えばクライマックスのジャガーシャーク登場シーンでは、何故かよく分からないのに心がジンワリとする。
あの場面でも一貫して潜水艦の内部を真正面から捉えた主要人物が左右対称にチンマリと並んで座っている画が、終盤まで散らかしまくったドタバタコメディを視覚的に収束させており、妙な哀愁が漂っていた。なんか泣ける。


「天才マックス」や「ロイヤルテネンバウムズ」から続く、迷惑系主人公シリーズの集大成を見た気がするな。
普段なかなか自分ができない振る舞いをする、ある意味で何よりも純粋なオッサン。
だからこそ嫌われるし、愛される。

という訳で、相変わらずマリファナ吸いながらファック連呼する可愛げのないオッサンを絵本のようなファンシーな世界観で映し取るチグハグさがクセになる、誰にでもオススメしたい一本でした。


そういえば今作でたびたび映されていたズィスーの足元。
印象的なあの可愛らしいスニーカーがadidasの限定コラボモデルで売られていたらしい。欲しい。
おかだ

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