シリーズ48作目で渥美清が実際に出演した最終作で、浅丘ルリ子がマドンナを演じる4作目となる。
渥美清はこの頃肝臓がんに侵されており、その姿が痛々しい。ほぼ歩く姿はなく、あってもたどたどしいし、話す場面はほぼ座っているか、しゃべりながらも寝転がって頬杖をつく姿勢になる。
私は本シリーズを浅丘ルリ子が出演した4作を続けて観ているため、15年前の3作目と比較することになり、なおのことその痛々しさが胸に沁みてしまう。
一方でリリーは元気で、満男へのお節介や気風の良い口調もいつも通り。リリーが寅さんに放つ言葉は優しく、時に辛辣ではあってもそこには愛がある。
つくづく、寅さんが誰かと一緒に住むのならリリーしかいなかったのだなぁと思う。
私は満男と泉の物語が描かれた作品を一つも観ていないので、その部分のエピソードには置いてけぼりをくうかもと思っていたが、後藤久美子のちょっとあれな演技力はあるにしても、若い時はこんなもんだよなぁという描かれ方は嫌味がなく、ほとんど気にせずに観られた。
寅さんは強烈な個性のおじさんというより偏屈なおじいさんという域に入りつつある印象を受けてしまうし、セリフの勢いもなくなっているのだが、やはり、本作が最後だということを知って観ていると、あぁ、あの寅さんがいなくなってしまうんだという感傷が湧いてくるのをどうしても抑えきれず、リリーと仲睦まじくご飯を食べたり喧嘩している姿につい涙腺が緩んでしまう。
最後にリリーとの共演で終わったのは本当に良かった。