Rita

悪魔が夜来るのRitaのレビュー・感想・評価

悪魔が夜来る(1942年製作の映画)
3.9
永遠の愛と魂の自由。

15世紀のフランスの城では、姫と騎士の婚約の宴が催されていた。余興に集められた旅芸人たち。人間たちを絶望の淵に落とすべく悪魔が地上に遣わしたジルとドミニクは吟遊詩人として訪れる。それぞれ婚約者の二人を誘惑するのだが、ジルは姫と恋に落ちてしまう。

悪魔と契約を交わしたふたりの男女。ドミニクとは裏腹に過去の後悔を引き摺るジル。絶望していながらも心の奥底では自由を諦めきれていなかった。悲劇的な場面にも穏やかさを感じられる。

王に命じられジルが詩を歌う場面が一番好きです。心に響く優しい歌、純真な乙女が夢見る美しい歌の物語。言われた通りの素敵な詩と甘いメロディに気持ちが安らぎます。踊りの途中に、ドミニクが楽器をひと鳴らしするとゆっくりと時が止まってしまう演出が面白い。

「天井桟敷の人々」には笑顔と寂しさ。「愛人ジュリエット」では夢と現実。「悪魔が夜来る」は愛と自由。どれも"愛"を心に宿している登場人物ばかり。哀しい結末も自身にとっての幸せは人それぞれ。マルセル・カルネ監督の作品が好きかもしれない。

本作はナチス占領下の厳しい時代に製作されており、ファンタジックなお話からは想像もつかない反ファシズムのテーマが隠れているようです。悪魔をナチス、人々を蹂躙されたフランスと見立てている。石像に変えられても、心臓の鼓動は波を打ち続ける。この物語には「自由を奪われても、決して魂までも奪うことはできない」という意味が込められているそうです。心は常に自分のもの。フランス人の精神は素晴らしい。
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