プログレ

スキャナーズのプログレのレビュー・感想・評価

スキャナーズ(1981年製作の映画)
4.0
【感情移入しにくい】
クローネンバーグの作品あるあるなのか、
映画の雰囲気は好きだけど感情移入できない登場人物ばかり出てくる。

冒頭の主人公のホームレス描写がリアルすぎる(フードコートで他人の食べ残しを漁ってテーブルの間をうろつく)ので、
主人公を見て嫌がり聞こえるように悪口を言う女性の方に感情移入してしまう。
しかもその女性が怒った主人公のスキャナー能力で殺されそうになるので主人公がやばい奴にしか見えない。

その後もアウトサイダーアートの芸術家に会いに行き(その芸術家はすぐ殺される)、
ヒッピーっぽい宗教みたいなコミュニティの仲間になり(その仲間もすぐ殺される)、
味方の博士が実は主人公の父親と判明し(その父親もすぐ殺される)
「妊婦に薬を投与して子供を超能力者にしている」という計画が明らかになるという、
内容が電波というか妄想っぽくて反応に困る展開が続く。

最後は敵が実は兄だったと判明し超能力バトルになるが、
「主人公の肉体は死んだが、主人公の精神が兄の頭蓋骨に開いた穴から兄の脳内に侵入し、兄の肉体を乗っ取って勝つ」という
悪役みたいな勝ち方をして終了。

【描写と距離感】
基本的にスキャナー能力の描写がエグくてキツい。
・他人の心の声が聞こえる→幻聴のように表現される
・人の精神を操作→相手に幻覚を見せる形で表現され、トラウマで苦しんだり、操られる人間が脂汗をかいてブルブル震えたりするリアクションのせいで超能力というよりも犯罪者が実際に被害者に危害を加えている現場みたいな印象が強い
・頭が爆発→ゴアすぎる

クローネンバーグは露悪的の方向性が耽美とか暴露とかじゃなくて裁判で陪審員に見せる証拠映像みたいな「実録」感があって過激だなと思う。
以降の作品ではこういう方向性が
・『ヴィデオドローム』→海賊版の電波で流れている過激な映像を録画して裏ビデオにする(都市伝説的な題材)
・『ザ・フライ』→物質転送装置に蝿が入り込んで変化していく(SF)
こういう小道具によってフィルターをかける、
ワンクッション置くことでラッピングされてて安全な距離を取って見れるんだけど、
『スキャナーズ』と『ザ・ブルード 怒りのメタファー』では当事者視点で距離が近すぎてしんどく感じる。
プログレ

プログレ