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長屋紳士録のmaiのレビュー・感想・評価

長屋紳士録(1947年製作の映画)
3.9
ぶつぶつとあちこちで愚痴を言いつつも、だんだんと子どもに対しての愛情が芽生えてくるおたねさんが好きでした。

子どもがあまりにも無碍に扱われるので、いくら拾ってきた子だからってもっと大事にしてあげて…!と思わずにはいられなかったけど、別に生活が裕福でもない暮らしで、それこそ時代的に戦争孤児があふれていただろうから、現在には即さないけれど、あれが普通だったんだろうなと思いました。
そして、初めとは打って変わってだんだんと幸平に対しての愛情が湧いてくるおたねさんが可愛らしい。決して彼女はそのことを認めないけれど。

そして、最後の引き取りに来た父親までの呆気なさがなんとも良かったです。おたねさんは、父親が迎えに来てくれた様子に涙を流すわけですが、そこで家族の大切さを説くのはズルいよ…!と思いました。
きっと家族がいなくなってしまった子たちへのメッセージなんだなと思うと尚更。
捨てられた、気にかけてもらえない…その状況がどんなにひどいものか。
それを最後に泣きながら話すシーンは胸に来るものがありました。

全体的にコメディタッチで面白かったし、最後はきゅっとまとめられていて…小津監督の作品のなかでも今のところ上位に入りそう。
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