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友よ、静かに瞑れのumihayatoのレビュー・感想・評価

友よ、静かに瞑れ(1985年製作の映画)
5.0
ただの渋いハードボイルドではなかった。
権力者がやりたい放題で、反対派が事をこじらせてるかの様なふざけた言説が市民から飛び交うという終わってる現代に、めちゃくちゃ響く社会派傑作でした。

土地開発問題で揺れる沖縄。
立ち退きを迫る建設会社社長を、刃物で襲おうとして捕まった友人を助けにきた主人公は、暴力装置と化した権力機構、買収される市民、最後まで抵抗をやめない売春婦達の寄り合い家族や、友人の子供と出会い、この街の分断の現状と友人の襲撃の真意を知る。

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さて、本当の「悪」とはなんだろう。
追い詰められた人情の帰結として、暴力に訴えるしか手段がない無産階級か。
それとも理性を建前に法をすり抜け市民を追い詰める冷徹な権力者・有産階級か。
はたまた権力者に抵抗せず、金で抑えつけられていい様にされてるのも知らず、あわよくば"そちら側"に裏返れるかと思ってすらいる中産階級の者達か。

藤竜也演じる"外から来た人"からもたらされる反乱の発破にも
「こういう"生活"ってやつが手に入ったのは初めてだから日和ってんのよ」という現地の無産階級達。
生活によって牙を抜かれ手の中に残るのは、愛よりも、金や"居るしかなかった"居場所である。

その中で見せる正義の貫徹とは

中産階級の飯屋に流れる、弱肉強食のTV番組。
汚職警官の背後にある「聖職」の習字。
細かい一つ一つの演出に激しい怒りが宿る。
恐るべし。
原作から舞台を変えて沖縄にしたことは、もちろん基地問題とも絡めているのでしょうし、民衆も含めた国内政治へのハードボイルドでウェイトの乗った糾弾姿勢は非常に見応えがありました。

各人の演技のトーンもとても素晴らしいし、歳とった室田日出男、めちゃくちゃかっこいいやんけ。。。

絶対そこでレモン齧ると思った!笑
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