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盲獣のpのレビュー・感想・評価

盲獣(1969年製作の映画)
4.0
江戸川乱歩原作、増村保造監督作品

ジャンル:変態

乱歩の変態小説が好きなので、この作品も好きでした。

"目くらの世界に残されているたった一つの楽しみ、それは触覚です。なかでも女の身体の手触りが一番です。温かくて、柔らかくて…"

盲目の男道夫(船越英二)に魅入られた一人の女性アキ(緑魔子)は、道夫を溺愛する母(千石規子)の協力のもと、道夫の家に拉致され、彫刻のモデルになるように強要される。道夫は触覚だけで楽しむ女体のオブジェをたくさん作っており、自分が理想とする肉体を持つアキをモデルにして最高の触覚芸術を完成させようとしていたのである。
アトリエと称される閉じ込められた場所には、鼻や耳や目や口や乳房の模型が壁一面に貼りつけられている。真ん中には巨大な女の裸体のオブジェのようなものが置いてある。最初はその異様さに驚き嫌悪していたアキだったが、ずっと閉じ込められた生活をしていくうちにアキの視力もなくなっていき、道夫と二人でどんどん触覚の世界の快楽に溺れていく……。

登場人物は道夫、道夫の母、アキの三人。たった三人なんだが、この三人の関係性が、激しく歪みながら変化していく様子が描かれている。触覚の世界に溺れるという変態性や、母が息子のことを愛しすぎる狂気、その母から次第に道夫を奪おうとする女の魔性、これらが、大胆に、鬼気迫る演技として役者たちが演じている。この三人の演技が本当にすごい。
変態性を含んだ歪んだ三人の愛憎劇を描く本作だが、これは変わっているように見えて、実際に起こり得る“普通”の愛憎劇となんら変わらないのである。ここに普遍的な構図があるからこそ、変態的な作品であるにも関わらず、共感してしまうポイントがあるのだと思う。だから、この映画はただの変態映画ではなく、うまく言えないが、見るものも一緒に変態世界へと巻き込んでしまう強さがある作品だと思う。ラストに向かうにつれてどんどん破滅へと向かっていく二人に目が離せなくなった。
万人向けではないと思うが、独特の普段できない感覚が味わえる作品。あと、緑魔子がめちゃくちゃかわいいです。すごく好きな作品です。


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