Kenta

鳥のKentaのレビュー・感想・評価

(1963年製作の映画)
3.7
アルフレッド・ヒッチコック作品。原作はダフニ・デュ・モーリエの短編小説であり、そこから誕生した映画作品。
日常に存在する"鳥"という存在。それらが人を襲うようになるとしたら如何なものか。動物パニック映画のパイオニア的作品。

ある女性メラニーは、小鳥屋である男性に話しかけられる。彼はミッチという名前であり、ラブバードという小鳥を買いに来ていたところメラニーを店員と間違えて話しかけたのであった。ミッチは、メラニーを知っていたが、メラニーはミッチのことを知らなかった。
その後、ラブバードを置いていないことがわかったミッチは自宅へと帰る。だが、メラニーは彼に興味を持ち、自宅を割り出すことに成功。そして、カリフォルニア州ボデガベイの彼の自宅にラブバードを届けるという粋な計画を実行するのだった。
その帰り道、ボートで移動中のメラニーを一羽のカモメが突き襲う。そして、それを機に町でも"鳥"に襲われた話を耳にするようになり…。

日常に当たり前に存在する生物"鳥"。
カラスやハト、スズメ、カモメなどと、生活で普通に生きているこれらの生物が突如襲ってくる怖さは不思議なものがある。仮に本当に襲ってくるとしたらとんでもなく怖い。その怖さを映像作品で実現させたのが今作であると思った。

パニック映画特有の人間同士の対立も見もの。
ミッチと元恋仲のアニー、ミッチの母リディア、町の人々等々。よそ者のメラニーに対立してくる人たちはまぁまぁいる。そして、アニーのミッチへの諦められない気持ちからの嫉妬や、子離れできないリディアのめんどくさい性格、"鳥"が襲撃してくるという非現実的現象の焦りから怒りやストレスのはけ口としてメラニーを利用する町民たちが物語を面白くしている。

単純な設定なものの謎は多い。
"鳥"が襲ってくる理由やきっかけの謎を観賞後にふと思った。そういえば、今作でそれは判明していない。ごくごく普通の日常に突然襲撃してくるのだから。そこが今作の醍醐味の一つでもあるようにも思える。そして、それを解明しようとするのも何か間違っている気がする。それと、ラストの展開もかなり好き。"鳥"の襲撃に終わりが見えるわけでもなく、この先に何が待っているのかは観客にお任せをするタイプ。このタイプの映画もいいが、やはりその後は謎である。

ヒッチコックの中では『サイコ』と並んで名作にあたるであろう今作。非常に設定は簡単なものの実際は奥が深い作品だった。"鳥"の襲撃の恐怖と伴って現れる人間の嫌な本質。パニック映画を面白くするのはやはりそこの面白さだなと思う。
Kenta

Kenta