柴田龍

二百三高地の柴田龍のレビュー・感想・評価

二百三高地(1980年製作の映画)
4.5
戦争危機の少ない時代や国では、戦争映画の意味を深く捉えることができることは難しいかもしれません。
ですが、この作品は、簡潔で想い溢れるセリフ、愚直で真っ直ぐなカット割に、伝えることに命をかけているような俳優陣により、いついかなる時代においても、戦争は悲惨で、日々の幸せは大切にしなければならないと、初めから最後まで表現されているような気がしました。
確かに、防人の詩や、シルエットでの涙など、感傷を狙いとし、お涙頂戴の場面もあるのかもしれません、だからといってそれをことさらに引き伸ばし、繰り返し押し付けてくるような現代の薄い作品とは、比べるべくもないほど、情感に溢れています。
冷感を気取ることなく、心を開いて鑑賞することにしっかりと耐え得る、日本映画屈指の映画でした。

現代に生きる映画人、俳優は、学ぶものが非常に多い作品でしょう。
私も、改めて映画の力を思い知らされました。
柴田龍

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