ナイトメアシンジ

すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史のナイトメアシンジのレビュー・感想・評価

3.2
ナイトメアプロダクション
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演出家・脚本家・映画評論家・演技講師・リーディング講師・ナイトメアプロダクションCEO の6つの顔を持つナイトメアシンジです。

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「映画『すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史』は、かなり主観的な自叙伝的映画」

映画「すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史」は、日本人なら誰もが知っているあの昭和を代表する漫画「巨人の星」や「明日のジョー」を生み出した長男の梶原一騎と次男の真樹日佐御夫、そして三男の高森日佐志の梶原三兄弟を描いた作品です。


映画「すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史」は2003年公開。

上映時間は104分。

監督は光石富士朗。
(ホラー映画「富江repleay」の監督ですな)

原作・脚本・監修は真樹日佐夫。
(梶原三兄弟の次男坊。原作タイトルは「兄貴-梶原一騎の夢の残骸」「すてごろ懺悔 - あばよ、青春」)

出演者をご紹介します。

梶原一騎役は奥田瑛二、真樹日佐夫役は哀川翔が演じています。

大山倍達役は真樹日佐夫。
(これはマジびっくり)

そのほか、赤井英和、夏樹陽子、神保悟志。藤原喜明。
(プロレス団体UWFの関節技の鬼。藤原組長。屋台の店主役で、結構長く台詞を喋ってます)

中山忍。
(ご存知、中山美穂の妹。最近では、二時間ドラマの新女王と呼ぶ向きもあるが、筆者は金子修介監督怪獣映画「ガメラ」(1995~1999年)シリーズの鳥類学者、長峰真弓役が好印象)

そのほか、十勝花子、ジョニー大倉など渋い面子。

では、映画「すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史」のあらすじをご紹介しましょう。

映画「すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史」あらすじ

昭和20年代、朝雄、真士、日佐志の高森3兄弟は、青春時代を喧嘩に明け暮れて過ごす。

三兄弟の父、龍夫は不良らを簡単に説き伏せるような教師だったが上層部と対立。

出版社に転職、文豪、永井荷風や谷崎潤一郎などの担当編集者となる。

龍夫は57歳でこの世を去り、尊敬する父の跡を追うように、朝雄と真士は文壇の世界に入ってゆく。

昭和30年代、朝雄は頭角を現わし、ペンネーム梶原一騎として作品を発表し始める。

真士も真樹日佐夫のペンネームでデビュー。二人は当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった石原兄弟(石原新太郎と裕次郎)に追い着け、追い越せとハッパを掛け合うのだった。

昭和40年代、真樹はトップ屋(ルポライター)の仕事にも乗り出し、同時に極真会館の大山倍達に師事して空手を学ぶ。

梶原は少年マガジンで漫画の原作を担当するようになり、「巨人の星』の連載を始める。真樹はオール読物新人賞を受賞する。

兄弟揃って手に入れた文壇での兄弟の成功。しかし、二人に試練が待ち受ける…


映画「すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史」のおすすめ度。


全編セピア色の映像が展開。
(原作・脚本・監修の真樹日佐夫の感傷的な思い出を表現しているに違いありません。この時代に生きた日本人ならウルウルくるかも)

間違いなく、”昭和を作った一人”梶原一騎が好きな人には興味深い映画です。(梶原一騎と真樹日佐夫の格闘技への造詣も垣間見えるし)

次男真樹日佐夫から見た兄、梶原一騎の生き様を”好印象”に描いた映画です。

この映画「すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史」は見る人を選びます。

”人間はすべて良いところで出来ているわけではない”という筆者のようなひねくれたシニカルな人間には、眩し過ぎる映画でした。
(作者の真樹日佐夫が自分ではなく大山倍達を演じたのか疑問が残ります)

だが、奥田瑛ニと哀川翔の共演は見ものかも。
(片や日本映画界が誇る演技派と片やVシネの帝王。哀川翔は2005年アカデミー賞優秀男優賞を受賞することになる)

また、夏樹陽子は場面は多くないが、存在感のある演技が素晴らしい。
(大山倍達の妻役)

松方弘樹も見事な演技。
(出るだけで画面が締まる役者は日本映画界でも、そういない)

筆者が一番気になるところをひとつ。

タイトルは「すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史」だが、三男の日佐志が少し弱い。
(登場も朝雄、真士より、圧倒的に少ない)

自叙伝映画の演技の難しさ

実在の人物を演じる難しさは演技をする者にはわかるはず。大げさにやっても、受け入れられない。のめり込み過ぎると、くさい芝居と叩かれる。

その人物を知る者と知らない者の双方に浮け入れられる芝居とは?

実は客観性と主体性の融合の度合いが難しい。
(答えになっていないけど)

本人に似せるため100パーセントのメイクをした場合、完コピをすれば、ただの物まねになってしまう。
(筆者の個人的見解ではね)

役者本人の個性をいかに乗せるかが大事。しかし、その本人が個性的であるほど、演じやすいのも事実。

外国の映画を比べるのは、いささか気が引けますが、2010年のイギリス・オーストラリア・アメリカの合作映画「英国王のスピーチ」などはその最たるものかもしれません。

(吃音に悩まされたイギリス王ジョージ6世、演じるのはコリン・ファース、その治療にあたった言語療法士をジェフリー・ラッシュとのの友情を描いた感動の作品。第83回アカデミー賞作品賞受賞)

日本人を例に挙げなくて申し訳ない。

でも、映画「すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史」は大げさでも、くさくもない日本人同士の奥田瑛ニと哀川翔の演技が見られる。

(安岡力也扮する外国人レスラーと奥田瑛ニと哀川翔のケンカのシーンを遠くから撮っているショットなんか実にいい)

じゃあ、くさい芝居の映画を挙げるとしたら?これはリスクが伴うなー
(日本人役者なら尚の事)

えー、筆者のあくまで個人的意見ですが、あえて挙げるとすると、日本映画「海賊とよばれた男」(2016年12月10日公開) の国岡鐡造役の岡田准一です。

(くさいとか大げさというより、岡田准一が演じるには無理があった気がします。年齢とか風貌とか雰囲気です。結構頑張っていたのはわかりますが違和感あり)

同じ百田尚樹原作の日本映画「永遠の0」(2013年12月21日公開) の宮部久蔵役は素晴らしかったけど。
(岡田准一ファンのみなさん すいません)

映画「すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史」は
昭和の感傷に浸りたい方はおすすめ。

”今宵も悪夢は世界のどこかで誰かが見る”

(ナイトメア・シンジ)