Rita

時をかける少女のRitaのレビュー・感想・評価

時をかける少女(1983年製作の映画)
4.7
私の人生を変える貴方との出逢い。

女子高生の和子は、理科の実験室にあった液体の匂いを嗅いだ途端、意識を失い倒れてしまう。それ以来時間の感覚が狂ったように感じる体験をした彼女は一夫に相談すると、彼はその現象が「タイムリープ」ではないかと言い出す。

原作である筒井康隆のSF小説を大林宣彦監督が映像化したもので、"尾道三部作"の二作目にあたる。長く愛され続けている日本映画史に残る名作。

白黒の8ミリフィルムの映像。初め月面での映像だと思ってたんだけど、麓に降りると吹雪の吹くスキー場が現れたからこれも大林監督のトリックなのかと思った。深町君との出逢い方も一瞬だけど時が止まったようにロマンチックなシーンでした。

一夫の登場シーンを見たとき、私から見た彼は宇宙人のように見えた。なんせ、スキーの帰り道にお花をつんで来たり、静かで何を考えているのか分からない他の人間とは違う印象が不思議くんですからね。

出会いと別れ。一夫が過去に来たことで彼が去った後でも、和子の人生は大きく変わったものになっている。一夫が来ていなければ和子は吾郎と恋仲になり幸せになっていただろうに。彼の記憶は消えたはずなのに心のどこかで彼の存在が生きている。たった数日の思い出が大切なものになる、愛する人とのお別れは切ないけど素敵なお話。

お別れの時、一夫は和子の頬に炭を塗りながら再び未来で会えることを信じ、和子は薬品の匂いで眠りにつく、全てが儚く映るのが好きです。和子と一夫の恋模様にふたりが初めて出逢った時と同じで、大人になった和子は再び彼とぶつかるが誰なのか分からないままますれ違っていくラスト。とても切なくて、だけどまた一から知り合う展開を期待しちゃったりして。

エンディングで原田知世が歌う「時をかける少女」の演出が可愛くて最高でした。他にも流れる音楽がとても良くて「時の子守唄」も好きです。

原田知世のデビュー作というのもあって独特な雰囲気を放つ今作にとって彼女の可愛さが強く主張されている。みんなの棒読みな台詞も含めて好き。監督は何故か心ここに在らずな人物を演じさせることが多いですね。そこがいいんですけどね。

大林宣彦監督の作品は「HOUSE」しか見た事がなく、とても変わった作品を撮る人だと思っていましたが、あんなにはおかしな世界観でもなく観やすくてとても素晴らしい映画でした。

監督が故郷である尾道を舞台にしているのは、広島民としてはとても嬉しく思います。尾道には去年行ったばかりで昔と今の街並みはあまり変わってないと知って、また尾道に行きたいと思った。今度はこの作品のロケ地巡りがしたいな。
Rita

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