ペペロンチーヌ

婚期のペペロンチーヌのレビュー・感想・評価

婚期(1961年製作の映画)
4.0
※2020年2月28日に「若尾文子映画祭」で鑑賞

婚期を逃しかけて焦り気味の資産家一家の姉妹(若尾文子・野添ひとみ)。兄(船越英二)の嫁(京マチ子)が気に入らず、まさに小姑として日々嫌味を並べて追い出そうとしている。そうすれば資産が自分たちに転がる混んできてわざわざ結婚する必要がなくなるからだ。一方の兄嫁はおっとりしているようで意外としたたかで、姉妹の目論見はお見通し。夫は夫で、家の中の微妙な空気を避けてか外に愛人を囲ってる。しかし、姉妹のいたずらで「あなたの夫には愛人と子供がいます」という手紙が届いてからは夫婦仲に微妙なズレが生じ・・・。

名脚本家・水木洋子によるウィットに富んだ(いや、富みまくった)脚本をベテラン・吉村公三郎が無駄なくスピーディーに描いたファミリー・コメディの小品にして傑作。とにもかくにも会話の応酬が楽しく、船越英二と京マチ子の寝室での会話などまるで本物の夫婦のよう。話自体は正直言ってしょうもない話なのだが、一連のやりとりが楽しくて全然飽きない。1961年の映画だがテーマがテーマだけに古さも全くなく、嫌味や暗さもない。大映の黄金時代の作品なので出てる役者が豪華の一言だが、中でも一家の婆や役の北林谷栄の存在感は圧倒的である。公開当時は50歳のはずだが、どうみても80歳くらいの老婆に見える。どことなく浮世離れしている一家を別の視点で見ている配置も見事だ。

何度も書いてるけど、この作品は1961年公開。この年に公開された主な日本映画は『用心棒』『モスラ』『豚と軍艦』など。おそらく当時ですらそこまで話題にはならなかったと思うが、それでもこの見事な出来栄えで、当時の日本映画がいかにハイレベルだったかがよくわかる。