カンヌ国際映画祭の最高賞、パルム・ドールを獲得しただけのことはある！面白い！
これは納得。
ヨーロッパ各国の共同合作ということだけあって、ボリューム・スケール共に壮大。
第二次世界大戦からユーゴスラビア内戦までの歴史を、コミカルかつユーモア溢れる展開にワクワクが止まらない。作中の登場人物全員が愛らしい。
また作品全般に渡り鳴り響く、ブラスバンド隊によるユーゴスラビアの民族音楽を取り入れた演出が大変素晴らしい。
戦争が生んだ惨劇を、さながら喜劇でも見ているような明るく前向きな演出が色鮮やかに彩る。
ナチス進行下の都市ベオグラードを筆頭に、失われゆく国々を桃源郷のように描く。地下での暮らし＝アンダーグラウンド。
マルコの策士っぷりとクロの豪傑っぷり、共に相反するコンビの掛け合いは愉快痛快。両者が恋焦がれるナタリアを巡るストーリーを軸とし、これでもかと言わんばかりの様々な展開が待ち受けており、一切飽きることなく最後まで楽しめた。
オチで思わず「！？」となってしまったが、これはこれで今までにない斬新な“大団円”。本作の中でも一際目立つ、特に印象的なシーンだった。
「この物語に終わりはない」正にその言葉に相応しい、まるで夢物語かのような圧巻のラスト。
とにかく内容が濃いうえに、あらゆる情感を取り入れた作品なので、様々な回想が求められる。
観る者の心を惹き付けて止まないカオスな魅力に翻弄され、果ては確かな感動が芽生える名作。
