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青の稲妻のKYのレビュー・感想・評価

青の稲妻(2002年製作の映画)
4.1
ジャ・ジャンクー監督作。中国映画。

中国の地方都市に暮らす若者たちの揺れ動く希望と不安、理想と現実を描く。中国山西省大同。19歳のシャオジィとビンビンは定職にも就かず毎日気ままな生活を送っていたが・・・

・・・

青春映画なのに外の世界に全く飛び出す空気がない何も起きないしやり取りが面白い会話劇でもないんだけど、スッと最後まで見れた。

スピーカーから宝くじのアナウンスが流れる街中。共産主義の国に一攫千金の夢が語られる転換期で、しかし主人公たちは自分の枠内のみで生き表情を変えない。

いや、正確に言えば枠外に出る事を知らない。主人公の1人が追っかける対象が街の営業で人気者のお酒のキャンペンガールというのも象徴的だ。

そして自分の生活から抜け出す手段が分からずアメリカ映画のギャングの銀行強盗に憧れる。お金が欲しければ勉強をするべきという論理もバンドを組んでビッグになるという論理もない。その土壌がまだ育っていない。

共産主義の国に自由主義経済が入り込んできた02年当時の若者に熱狂はなく戸惑いが見られるのが面白い。そしてそれを自分が面白く思えたのには今の日本と共鳴するところもあるのかもしれない。

日本では夢を見る事を教育されながらも、そこから挫折してしまうと社会との距離感が離れていく。映画の北京オリンピックが決まった時の無表情な若者の顔と、東京オリンピックが決まった時の若者の無反応はある意味同じで、希望ある社会に乗りきれていないという共通点がある。

文化風俗の描き方も上手い。カラオケや性風俗描写があるも、それぞれに洗練されたシステムが確立されていない感じが見てて面白い。クラブシーンに至っても洗練されておらず、しかしシチュエーションそのものをきちんと描くので紛れもなく自分たちのクラブと同じ様に感じてしまう。
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