歪み真珠

テルマ&ルイーズの歪み真珠のレビュー・感想・評価

テルマ&ルイーズ(1991年製作の映画)
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地獄からやってきた女たちは痺れるほどかっこよくて泣きたくなるほど光っていた。
麦色のくるくるした髪をはためかせて跳んだ先は勝利だ。二階堂奥歯さんが飛び降りたときときっと同じだ。
テルマもルイーズも、二階堂奥歯も、彼女たちは自分が最後まで自分であるために跳んだんだ。ルイーズがたくさんのアクセサリー、その中にはおそらく彼からもらった指輪もあったはず、を一つのハットと交換して細いデニムをスカーフみたいに身につけるシーンが眩しかった。
彼女たちにはぜったいにぜったいに勝ってもらわないと困るのだ…!(何に「勝つ」のかはうまく言えないけど、とにかく勝ってもらいたかった)と祈りながら見ていた先に、彼女たちがキスをして、笑顔で跳んでいたからエンドロールは涙で何も見えなかった。ありがとうね。
今からだいたい30年ぐらい前につくられた映画。現実はやっと変わろうとしてるところかしらん。こんな脚本誰が?!まさか男か?!!と期待しましたが、女性の脚本家でした。
「語りえないことについては、 沈黙しなければならない」とウィトゲンシュタインも言っているので彼女たちの受けた傷については私は何も語り得ない。(こういうとき偉い人の言葉というは便利だな。自分の無知をうまいこと隠せるという意味でも)でも、できることはやっていきたい。

それとレインマンといい、このころのハンス・ジマーの音楽がやっぱり好きだなぁ。ちゃんと彼の「音楽」が鳴ってる。

ここから先はながい独り言。オノ・ヨーコが『男女平等』のシュプレヒコールを聞いて、「なんで男より優秀な私たち女がわざわざ下に降りなきゃいけないの?」と言い放った話も好きだけど。塩野七生がそれに対して「それを全部わかった上で男を上に置くのが愉しいのよ」とエッセーで語っていたのはもっともっと好きだ。これだから七生はサイコーなんですよ。私の破廉恥な脳みそは騎乗位なのに下から攻められる的なアレだと解釈しております(あぁこれでますますこのアカウントの存在を人に言えなくなってきたぞ)でも、その塩野七生も言ってる。原稿料が女だからという理由で、男よりひくいのであれば私は猛烈に抗議すると。そしてその原稿料みたいな話はきっと山ほどある。あのブタ野郎のような男もいるのだ。アレキサンダー・マックイーン、なんであんなおどろおどろしい服ばっかりなんだろうと思っていたら、“i design clothes bc i don’t want women to look all innocent and naive. i don’t like women to be taken advantage of. i don’t like men whistling at women in the street. i want people to be afraid of the women i dress”
と言っていた。
オノ・ヨーコにも塩野七生にもなれないし、マックイーンの服を着こなすパワーもないけれど、この時代に生まれてきたのだし、せっかくならば、”地獄からきた女“の一人になってやろうじゃないのと思う。