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愛の予感のcinemaiquotのレビュー・感想・評価

愛の予感(2007年製作の映画)
3.6
悲劇を起点とする対立から宥和へ向けての、繰り返す日常の変奏曲。同じような場面がひたすら繰り返されるが、それが退屈に感じられないのは作り手の力量か観賞者の気質か。もちろん前者の要因が大きいと思うが、人の生活をじっと覗き見るような感覚は観る人によっては惹きつけられる要素でもあると思う。
セリフは冒頭とラスト以外は皆無だが、食事の順番、食べ残し、買い物の中身をはじめ微妙に変化する内容とそれにリンクしての登場人物のアクション。注意深く観ていると事前に入念な準備をされているのだと気付く。ちなみに監督自身が演じる主人公の男が劇中で読んでいる文庫は『イワン・デニーソヴィチの一日』だった。
多額の予算をつぎ込んでも浪費でしかない駄作がある一方、こうしたミニマルな低予算映画でも、貴重な感動を与える作品がある。ロカルノ国際映画祭でグランプリを受賞した作品だそうだが、もっとこういう映画が観られるべき。仲代達矢主演の『海辺のリア』公開に合わせての監督作品放送ということだったが、日本映画専門チャンネルには感謝。
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