たく

マミイのたくのレビュー・感想・評価

マミイ(1930年製作の映画)
3.4
売れない芸能一座に起こる色恋沙汰を描く騒動記。アル・ジョルソンといえば昔観た「ジャズ・シンガー」で、黒塗りして母親に捧げる歌を歌ってたのが強烈な印象。本作でも黒塗りの舞台公演が出てきて、今では当然ながら差別的で許されないことだけど、こういうスタイルが「ミンストレル・ショー」として昔に流行ってたのは知らなかった。タイトルの「マミィ」は主人公の母親のことを表してる他にも、主人公が終盤で黒人女性に対してこの言葉で呼びかける場面があって、アメリカにおける黒人女性のステレオタイプ表現でもあるんだよね。後半で唐突にカラー映像が入ってくるのが驚き。監督のマイケル・カーティスは「汚れた顔の天使」「カサブランカ」「ホワイト・クリスマス」を昔に観てた。あと「ジャズ・シンガー」のリメイク版(1952)も撮ってるんだね。

アメリカの売れない芸能一座の歌担当として活躍してるアルが、座長の娘のノラに密かに恋心を抱いてるんだけど、ノラは看板役者のウェスティーにゾッコン。でもウェスティーは女とくれば見境もなく声をかけるプレイボーイで、そんな彼にやきもきするノラに業を煮やしたアルが逆にウェスティーを嫉妬させようと一芝居打つ。よりにもよってアルとウェスティーが親友同士なのが関係性をややこしくしてるんだよね。

アルの一芝居が逆効果となってノラの怒りを買ってしまい、落胆からやけ酒で泥酔したアルが賭けトランプのイカサマで大負けするところで、ウェスティーがアルを介抱してイカサマを仕掛けたトンボーを責めるあたりに、アルとウェスティーの友情が垣間見えてジーンとくる。ここからトンボーの小細工によってとんでもない事態が起こるのがハラハラ展開だった。後半ではところどころカラー映像が入ってきて、ここからラストにかけて話の展開と映像が相まってなかなかカオスな世界になってた。終盤でアルが母親の元に訪れて別れを告げるシーンで、母と息子がやけにベタベタするのが異様な感じがしたんだけど、「ジャズ・シンガー」の路線を狙ったのかな?
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