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ホビット 思いがけない冒険のutakoのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

(再観賞)
ロード・オブ・ザ・リングの時代より60年前の前日譚にして、指輪物語の主人公フロドの養父ビルボ・バギンズの冒険譚。ホビット族ビルボと魔法使いのガンダルフ、ドワーフ族ドゥリンの王位継承者トーリンはじめとするドワーフたち総勢13人が、邪竜に奪われたドワーフの故郷「山の下の王国」と財宝を取り戻すため『はなれ山(エレボール)』を目指す物語。

指輪物語に比べるとコミカル要素も多めで物語は至って解り易いです。旅の途中に出会すトロールやオークとの戦いはアドベンチャー感たっぷりで楽しいし、素晴らしいロケーションは指輪物語に負けず劣らず。ピーター・ジャクソン監督の細かい拘りが詰め込まれた壮大な世界観は、2時間44分があっという間に感じられる面白さです。

他民族国で成り立つ「中つ国」において、歴史的因縁は大きなキーワードですね。決裂・孤立からの再生と共存。過去の決戦で裏切られたエルフ族に恨みを持つドワーフ達ですが、協力・団結していく姿があったり、ビルボとも絆を深めていく種族を越えた友情が描かれます。ガンダルフやエルロンド卿、ガラドリエル、サルマン…馴染み深いキャラの指輪物語以前の交友の様子も、この頃はまだ平和で感慨深い。
今作初登場する、変わり者の茶色の魔法使いが動物たちと生活しており、うさぎソリで野山を走る可愛いシーンや、暴れる岩の巨人から逃れたり巨大鷲に救出されるなどのファンタジー的見せ場は、指輪物語を超える楽しさがあるかもしれません。

旅の途中、ゴラムに出くわし指輪を拾うエピソードもしっかり描かれ、この作品でも指輪は重要な役割りを持ちます。指輪の存在があることで闇の勢力が眠りから覚め、ドワーフがかつて倒したはずのアゾグ(オークのボス)が復活したり、指輪物語に繋がる伏線も脈々と描かれます。

主要人物が小さなビゲのおじさんばかりですが個性様々愛嬌たっぷりだし、美しいエルフたちが可憐なアクションで共闘してくれるのも見所。13人の旅の仲間たちとエルフや人間たちが友好を築いていく過程は、指輪物語同様に諦めない志しや死生観、格言もふんだんに盛り込まれ相変わらずグッとくる物語にもなっています。

邪竜スマウグは、今作その実態はぼんやりとしか描かれていません。冒頭、空を飛び火を吹き町を焼き払うドラゴンとの決戦になるのか…と、思うと壮大な戦いを予期させるワクワクな三部作の一作目ですね。
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