墨石亜乱

シャーロック・ホームズの素敵な挑戦の墨石亜乱のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

原題:THE SEVEN-PER-CENT SOLUTION
(7パーセントの溶液)

もし、ホームズの物語世界が本当だったら・・・
という原作への愛あふれる、これは二次創作映画。

1981年のウィーンを舞台に
ホームズとワトソンがある実在の有名人物と出会う。

初めて観た時、良くできてるなーと感心しました。
まず、舞台となる1891年の欧州情勢・風俗がよく再現され
謎解きに それが生かされていること。
アクションやロマンスもありますが、それは添え物で
“素敵な挑戦” って邦題は、ちょっと違う。

良い点は、知的に作られていることで
ホームズが実在していたらという「if」の設定と
原作ホームズっぽさが違和感なく融合している。
有りそうで無い、希有なホームズ映画と言えます。

とは言え、いまいちマイナーな存在で
その理由は・・
近年のMCU的ホームズたち、ロバート・ダウニー・Jr
ベネディクト・カンバーバッチと比べて
全然ヒーローっぽくないからでしょうね。

偏屈で神経質、
コカイン中毒が進み妄想と禁断症状に悩まされ
外見は、痩せて骸骨の様な中年男。
絶対に女子に受けないタイプ(笑)

ヒーローとして大活躍するホームズを観たい人には
もちろん、オススメしません。

ですが、
事件とは別の意味で窮地に落ちたホームズが
実在の人物との夢のコラボで、ある小さな事件を解決し
自分自身の迷宮から脱出する姿を描いている・・・

これは《実によく出来たメタ構造のホームズ物語》である。
そのエンタメとは異なる価値は保証します。

DVDソフトがメジャーレーベルから再発売されたので
知的な遊び心がある人には、ぜひ観て欲しい映画です。

【余談】

原作小説の作者(映画の脚本も担当した)ニコラス・メイヤーは
タイムマシンの作者H・G・ウエルズが切り裂きジャックと現代のアメリカで対決する
スリラーSF映画『タイム・アフター・タイム』で監督デビューした才人です。

スタートレックの劇場第2作「カーンの逆襲」6作目「未知の世界」も監督。
4作目でカーク船長たちが現代にタイムトラベルする映画シリーズ全体の構成にも大きく関わっていると思われるます。
SF界においても重要なクリエイターさんなのです。
墨石亜乱

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