ヤニカス幼稚園児

緑の光線のヤニカス幼稚園児のレビュー・感想・評価

緑の光線(1986年製作の映画)
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初ロメールだけどとても良いものを見た。

冒頭の1シーン目から三人の女性が映り、会話を繰っていく。けど主人公は誰かは検討がつかない。そのうちああこの人が、と思うが、決してその顔自体へとクローズアップすることもなく、主観と客観のリズムに乗って誰かと誰かが会話をする様を映し出していく。だからその仕草、手つき、眼差しや表情の全てが浮き彫りになって、人間そのものを見てる感じでとても心地良い。 こういうのがいやらしく映らないのはなぜだろう。大人も、赤ん坊や子供も、全ての人々がカメラの前で自分を浮き彫りにしている様はなかなか見れるものではないと思う。

会話劇自体も言語の壁で駆け引きしたりで軽快だし、何より説明らしい台詞は一切ないので(だから一番自分を語りたがりな女性が主人公なのかもね)、会話にも生が満ち満ちている。どこからどこまでが脚本/アドリブなのかとかもよくわからないしわからなくてもいい、ただその時間を90分!で封じ込めてくれたことや、そういう風に映ってくれたことに対する敬意しか出てこない。

庭には花がありそのそばで笑う人がいて、一方で砂浜にはバカンスを楽しむ人々がいて、海はいつも揺らいで太陽は沈んで、といったことそのものがいいなと思える、人が生きてることに対する溢れんばかりの愛おしさが詰まってるシロモノでした。星つけるとしたら満点にしたいなあ。