うめ

エド・ウッドのうめのレビュー・感想・評価

エド・ウッド(1994年製作の映画)
3.6
 エド・ウッドのファンであるティム・バートンが彼の半生を映画化した伝記的作品。特に『グレンとグレンダ』『怪物の花嫁』『プラン9・フロム・アウタースペース』という3作品の制作の裏側を描いているが…全編、ティム・バートンのエド・ウッドへの愛が溢れている!冒頭のタッチストーン・ピクチャーズのロゴが出るところから始まり、至る所にエド・ウッド作品のシーンが再現されている。「糸を引け」というセリフ、アンゴラのセーター、タコの模型…もう挙げたらキリがないくらいたくさんある。どれだけ好きなんだよ、ティム・バートン(笑)ベラ・ルゴシ始め俳優も実在の人物に似ているし、徹底ぶりがすごい。
 ただ私は今作を観るにあたって、予習として『グレンとグレンダ』『怪物の花嫁』の2作品を観ていたので楽しく観ることができたのだが、エド・ウッドの作品を観たことのない人にはなかなか面白さが伝わらないかもしれない。(というのも、映画制作の裏側は見せているが、全体のストーリーや場面などはあまり説明されていないのだ。)是非、上述の3作品全て観てからの鑑賞をお薦めしたい。
 ティム・バートンの愛はただ再現というだけで終わらないところがいい。今作は映画制作の資金集めに翻弄しお金のない限られた状況で、作品を作ろうとするエド・ウッドの姿を描いている。だが、そうして出来上がった作品は酷評されてしまう。終盤、『プラン9・フロム・アウタースペース』の撮影中、資金元などから「ああしろ、こうしろ」と注文をつけられ我慢の限界に達したエド・ウッドが向かったバーで、憧れのオーソン・ウェルズに出会う。そこでオーソン・ウェルズは自分の夢の実現のために映画を撮れとアドバイスをする。その一言によって、エド・ウッドはやる気を取り戻し、なんとか映画を完成させる…これは、実はエド・ウッドは実際にオーソン・ウェルズに生涯会ったことはないのだけれど、脚色で入れたシーン。現在、エド・ウッドと同業者になり彼の気持ちや状況がよくわかるティム・バートンの粋な計らいなんじゃないかなぁ〜と思うのです。
 音楽の世界で、「musician's music」(音楽家に愛される音楽)があるというのを聞いたことがありますが、エド・ウッドの作品も言うならば「director's movie」(映画監督に愛される映画)なのではないかなぁと思った。同じ立場にいるからこそわかる面白さってあるんでしょうね。それが観客に伝わりづらかったり、時代のタイミングで伝わらなかったりするのはほとんど予測しようがないんですよね。ただどんな名作も駄作も、エド・ウッドのようにたくさんの苦労や楽しさが詰まった作品だと思って観る姿勢も頭の片隅に残しておきたい、そう思った作品でした。

 さて、復習として『プラン9・フロム・アウタースペース』観ようかな。
うめ

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