映画おじいさん

集団奉行所破りの映画おじいさんのレビュー・感想・評価

集団奉行所破り(1964年製作の映画)
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今まで観た時代劇の中でベストワンかも知れない。少なくとも私にとっては時代劇ベストスリーには確実に入る傑作。

おどろおどろしいタイトルながら、オープニングクレジットの筆文字が力強くないこと。そっからグッときました。

冒頭はカメラに話しかけたりもするコメディタッチのスリ師小噺。徐々にシリアスな展開となるけど冒頭のちょっと軽い感じは全編でキープされていた。そこがまず最高。

作戦会議を小舟の上でやったり画的な工夫もいっぱい。

鼻を切られた浪人たちが医者に診てもらっている時に話される逸話が、歌舞伎にもなった『男の花道』(1956年)みたいだなと思ったら、原案が本作の脚本家・小国英雄だった(←あとから分かってちょっと嬉しい)。

好きなエピソードがいっぱいあるけど、特にヤラれたのはイジメられキャラの田中春男が桜町弘子に告白するところ。涙なしでは観られない最高のシーン。田中春男が自分のことのように思えて。しかしこういうのはストーカータイプに分類されるんでしょうね…。
手前に桜町弘子がいて少し距離がおいた後ろに田中春男がいるという奥行きのある構図も最高。

土砂降りの奉行所中庭に倒れる大友柳太朗を上から見下ろすショットにはゾッとするような虚しさがあった。

ラストの折り鶴のアップは、欧米の古典ミステリ映画のような格好良さがあった。端的に言えばオーソン・ウェルズの映画を思い出した。具体的にどの作品かと訊かれたら困りますが。

とにかく良過ぎて何を書いていいのか分からないくらい。早く二回目を観たいです。。