路面電車の運転手ラウリとレストランの給士長のイロナの中年夫婦。
不況のあおりで夫婦共々リストラにあう。
その後、これでもかという位うまくいかないんだけれど、レストランを開くという夢に向かって夫婦で頑張るという、単純なストーリー。
アキ・カウリスマキ監督の「敗者3部作」1996年。
やっぱり、セリフ少ない。仏頂面。シンプル。
でも、悲しみと絶望の中にあるはずなのに、ひょうひょうとしていて、そこに貧乏くささはない。悲観もない。常に前向き。
哀愁につつまれながら、わずかな希望を求めて、ひょうひょうと頑張る姿が、なんともユーモラス。
登場人物たち、ほとんど表情も変わらず、基本的にぶっちょうずらなんだけど、うっすらと変わる表情がまた良い!!
俳優たちは、カウリスマキから、左眉毛だけで演技してほしいって言われてるんだって!!
主人公たち以外の人や犬もなんだかユーモラスだし、
無表情だからこそおこる絶妙な笑いが、このテーマを全く重いものにしていない。
なんだか笑っちゃう。
情けない事してても、それを見つめるカウリスマキの目が暖かいのがわかる♪
原色を使った色づかいは反対色を絶妙に配置していて目をひく。素敵!!
しかし、ほんとにまぁ、カウリスマキはセリフが少ない。そして、飲んで吸ってる(笑)
無表情でも、シンプルなストーリーでも、これだけ心が暖まるのって、やっぱり、カウリスマキだな♪
登場人物たちの心情を、無駄を削ぎ落としたセリフと音楽と映像で、全て表現していて、素晴らしい♪
ラストにはうるうるっとしてしまいました。
このジャケ、空の浮き雲を見ているラウルとイロナのラストシーン。
人間って愛しいな。
人生って、浮かんでは沈み、沈んでは浮き、プワプワと形を変えて、輪郭のはっきりしない、浮き雲のようなものなんだなぁ。
ちなみに、心不全で亡くなった、マッティ・ペロンパーに捧げられています。「愛しのタチアナ」の自動車整備士役など、カウリスマキ作品の常連。
カウリスマキ作品は、同じ役者をよく起用する事でも有名。
イロナ役のカティ・オウティネンもその代表で、色々でてます。タチアナ役もそうだよ。
いけてない、美男美女じゃないところが、心惹かれる。