浮き雲の作品情報・感想・評価

「浮き雲」に投稿された感想・評価

mylife

mylifeの感想・評価

5.0
アキ・カウリスマキ監督の「浮き雲」…カウリスマキ監督の作品は全て観た訳では無いのだが本作が今のところ一番好きなのだ。敗者三部作の一作品目にあたる作品としても有名。因みに敗者の次作が「過去のない男」完結作は「街のあかり」となる。

序盤のソニーのブラウン管テレビ。おそらく当時はまだ高くローンで購入されたようだが、カラー仕様とリモコン付きで喜んでいたのを見て時代は変わったものだと思った。今や…4K8Kの世界やからね。これは当時のフィンランドの不況という時代背景もありそうだが。本棚までローンとは…少し驚いてしまう。しかも、本はまだ無いような台詞もあったし。思わず、何でやねんと…ツッコミ入れたくなるようなワンシーンでもあるが、そんな些細な事さえも何処となく哀愁っぽく感じてしまう。

ところで、本作のはそんな不景気な背景のまま夫婦共にリストラにあったお話。まるで下り坂を転がるようにそこからかなり落ちていく。希望が見えてこないが夫婦の絆は強い。ラストシーンでの夫婦で空を見上げるシーンに全てが集約されており余韻にもたっぷりと浸れるのが心底心地良いのである。この独特な雰囲気が相変わらず癖になる映画だとも再認識した。

余談だが映画館のシーンで「ナイト・オン・ザ・プラネット」のポスターが貼っているのを見てニヤリする1コマもありファンには嬉しい演出でもある。

あと、思いっきり個人的なことだがレビュー250記念に個人的にも大好きな「浮き雲」をチョイスしてみた。
最後の空を見上げるカティ・オウティネンの表情がもう、素晴らしいのね。アキさんの男性キャラクターって、大柄で無口で仏頂面でライダースファッションのイカつい感じの人が多いけど、男らしさが変に空回りしたようなシーンがちらほらあって、なんか笑えるのよね。

このレビューはネタバレを含みます

冒頭の妻が仕事終わり、夫の運転するバス(路面電車?)にキスして乗り込む姿から、失業し、2人がどん底に落ち、見事レストランを成功させるラストまで、2人の温度は変わらなかったように思う。

ボロボロのみすぼらしいパブで働かなくてはならなくなった時、初めて妻が涙を見せる。
そこでいかに、妻が仕事に誇りを持っていたかわかる。そしてそれを重々承知している夫の抱擁。妻への未払いの給料を請求するため乗り込む夫。本当に寡黙な2人だが、とても強い絆で結ばれている。こんな夫婦になりたいと思う。

最後、レストランがなぜ繁盛したのかエピソードが少しでも欲しかった、というと野暮かな……。
至って単純な失業した夫婦の物語。似たような形式を持つ様々な文学があるだろうが、単純さ故に映像表現の魅力が際立つ。気がする。

無機質な人間、無機質なモノ。金と酒が原動力の骨々しいシステマチックな進行の中で、犬と歌の存在が異様に肉々しい。

映画の豊かさとは装飾・余剰の中にあるのだと気付かされる。

アンドレ・カイヤットの『眼には眼を』にも似ている気がする。しかし『眼には眼を』の場合は砂漠という物質が壮絶な人間の憎悪、心理を表すのに対し、『浮き曇』で我々が見るのは空を見上げる二人であり、空は映されない。「映像不在の発見」とでも言うのだろうか。

「過去のない男」「街のあかり」と並ぶ敗者三部作といわれる作品ですが三部作の中で最も面白かった。

特に魅力のない登場人物たちが、無口で喜怒哀楽をほとんど出さず、セリフがほとんど無いカットを重ねながら淡々と進むストーリー。
限りなくどん底へと落ちていく主人公。
唐突に突っ込まれる笑えないギャグ。 
古臭い演出。
薄ら寒い映像。

最後のちょっとした温かさを最大限に引き出すためのタメがバツグンに効いてます。
ラストがなんともハートウォーミングで余韻残りまくり。
あのラストはずるいわ 鳥肌級
カウリスマキでは「コントラクトキラー」の次に好き
DZ015

DZ015の感想・評価

4.2
「本棚とソファのローンも残ってるのよ」
「何とかなる。4年ぐらいすぐだ。そしたら本を買おう」

大好きな作品。パンデミック下の今観ると余計に刺さる。どんな苦境でも飄々と、ユーモアは忘れずに。現実はこの映画のようにうまくはいかないかも知れないが監督の「映画を観終わった人が少し幸せになるように」という想いがほっこり伝わる傑作。
au

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3.5
初めてのカウリスマキ。色が綺麗。でもそんなに好きなタイプの話ではない
nonko

nonkoの感想・評価

4.7
大好きなアキ・カウリスマキ作品の中でも特に好きな作品。
この世界観に癒される。何度見てもいい。ストーリー追わないでつけっぱなしでもいい。
名優マッティ・ペロンパンがこの世に居ないのが改めて寂しい。
アキ・カウリスマキ作品鑑賞10本目。不況のなかリストラされた夫婦が愛を頼りに立て直す。撮影前に他界したカウリスマキ作品の常連、マッティ・ペロンパーを写真で登場させるという粋な演出。(夫婦の亡くなった子供の写真を、ペロンパーの幼少期の写真に)
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