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楢山節考のASKのレビュー・感想・評価

楢山節考(1958年製作の映画)
3.5
友人に勧められて観たが、観たことを後悔するぐらい悲しい気持ちになった作品。

良い作品の定義を「心揺さぶられること」と定義するなら間違いなく満点。もう二度と観たくないし、観たことを忘れることができない。

姥捨て山という言葉は聞いたことがある人も多いと思うが、それが風習として残っている集落の話。

序盤はなんの説明もなく集落の様子が描かれ、お年寄りを蔑ろにする雰囲気、歯を折ろうとする老婆、異常なまでにご飯にがっつく人達、楢山へ行くのは誇り高きことで早く行きたいと言う老婆、それを嫌がる大人しく暗い息子、行け行けと囃し立てる悪ガキ風の孫など、序盤はこの世界で何が起こっているのかついていけず退屈を感じる。

ただ一点、遠くの背景を見ると、明らかに絵でセットだと思われるが、道や周りの木々や建物が異常なまでに精巧に造られているこの舞台背景にとてつもない違和感を覚え、妙な狂気を感じる。楢山までの道程や、雪が降るシーンなどもリアルすぎて視覚と知覚が一致しなくて最後まで混乱していた。

「母を山に捨てる」この行為をもし自分がやらなければいけなかったら…をリアルに想像してしまって、心を握り潰されるような苦しさを味わった。母の強さ、息子の葛藤、嫁の優しさ、孫の残忍さを観て、かつては「生きる」ことがどれだけ大変かを感じる。

今を生きている自分の足るを知り、恵まれていることが実感できる映画だ。
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