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ヒミズのmokaのレビュー・感想・評価

ヒミズ(2011年製作の映画)
4.8
価値観を変えてくれた作品。
“要するに何だって分かる、自分のこと以外は”というヴィヨンの詩の一節が悩める青年期の本質を突いていて深く心に響いた。
将来に希望を見出すことができない住田の無表情な顔や、無関心で投げやりな態度や、鋭い目線や、予測不可能な行動までもが全て愛おしく思えた。
愛を与えられることがなく、暴力しか受けてこなかったために、あらゆることを暴力でしか表現できず、同時に、突然愛を与えられても素直に受け入れることができなくなってしまった住田に、素直に手を差し伸べてやりたいと感じた。
劇中の人物にこれほどまでに感情移入させられたのは初めてだった。
また、周りの目や嫌われることを恐れず、自分の気持ちに正直で、積極的に住田と関係を築こうとする茶沢を羨ましく思えた。
愛するということは人が遠い昔から本能的に営んできたものだから、素直に自分の愛を表現できる茶沢を人としてあるべき姿のように思えた。
また、自分を偽ってまで不特定多数の人に好かれようとするのではなく、茶沢が住田に愛を与えたように、本来の自分を好きになってくれるたった一人の人間から愛を貰えさえすればそれで幸せなのだとも思えた。
さらに、挿入されたバーバーの曲が住田のやり場のない悲しさや憎しみや憤りの気持ちの増幅効果を出していて非常に良かった。
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