しちみ

ヒミズのしちみのレビュー・感想・評価

ヒミズ(2011年製作の映画)
5.0
やっと観れた!!!ずっと見たかった作品でした!そのため見る前から期待値はぐんぐん上がっててこれで期待より面白さがなかったら…と思いつつDVDの予告を飛ばしていたのですが

開始1秒。目が離せない。なんだこの映画?ってぐらいの衝撃さ。
なんで雨が降っているのか、なんでこんなにも街がボロボロなのか、なんで彼女は一人、喋っているのか。

始まってすぐそんなことが理解できるか?いいや、理解など到底無理。だから次のシーンに答えを探してしまう、そしてそれが連鎖して目を離せなくなる。
園子温監督の作品を見るのは実はこれが初めてで特に下調べなどもしてませんでした。ですがすぐになんでこの監督が鬼才と呼ばれているのか分かってしまったような感覚に襲われます。

まずコントラストがすごく好きだった。
まず住田(染谷将太)くんは絶対に優しくて温厚なタイプだと思ってたのに全然違かった。すぐ殴るし、希望なんてないし普通だと思ってるけど実は普通に憧れる非日常を生きる中学生。

それに加えて二階堂ふみの役所も良かった、少しおかしくて常に前向きで自然と笑顔にさせてくれるような役所。
だけど彼女にもそれなりの異常性があって家に帰れば叫びたくなるぐらいに神経が尖ってくる。

全体的に2人は普通じゃなかったと思います。どう考えてもおかしい、あんな殴り合える物なのか?そう思ってしまう演技力には本当に息を呑む。その2人が唯一人間らしさを見せるのは家族といる時だけだったのかもしれない。

おそらく二人とも家族に嫌われいなくなることを望まれていた。
でも皮肉な事に溢れかえる人間らしい感情を剥き出しにするのが家族の前だけ。
そしてそれが徐々に他人にも出始める。
一緒にいたホームレス(でいいのか?)の人を殴ったり怒鳴りつけたり、普通なら酷い奴になっていってると思うでしょうが

私は逆にいままで何に対しても深い欲がなかった染谷将太が他人に対してドンドン牙を向け感情を出したシーンだと思います。
冒頭で出てくる震災被害の図が映るシーンはぐちゃぐちゃで雨が降っていてこの時にようやく染谷将太の心情を表しているのか?と思い出した。

なんせ最初の方で父親を殺してどーする?みたいな映画だとばかり思っていた私にとってこの映画の一つ一つが衝撃的だった。

母親が出て行った後の染谷将太と父親にいらないんだよと言われた時の染谷将太の心の奥底からの闇というか狭間に見える不気味な気持ちが見ている私も不安にさせました。
父親が染谷将太の顔をゆっくりと撫で回すシーン。
あれほどまでに腹が立つシーンがあるのか。もう時に既に映画の中に入り込んでいる。

しかし、ここまで長いレビューを書いておいて情けないことにこれ以上に伝えたいことが言葉でかける気がしないのである。

一つだけ言えるのは死ぬまでに見ておいて心から良かったと言える作品だった。

「自首しろよ」監督はこのシーンに6時間も時間を費やしたそうです。

題名として使われている「ヒミズ」このモグラは日中は光が強く動けないため、夜に徘徊するそうです。その名の通り日見ず。また死体は臭いが強く食べられることなく死体が残るそうです。
モグラのくせに前足が短く穴を掘るのに適してない。

細かい。やたらと細かい所まで伏線を伸ばしている、久しぶりに楽しいという映画だった。

頑張れ!!の掛け声からフェーズして震災被害の図が映し出される。

まだぐっちゃぐっちゃだ。だけど少しだけ綺麗な道がまっすぐ通っている。雨は止んだ。頑張れ。なにを意味しているか全てを理解できるほど優しい映画ではありません。

悔しい気持ちもあります。自分には理解しきれていないところが大いにある。
また見たい。全てを理解してやりたい。

一つだけ言うのならば染谷将太と二階堂ふみが中学生に見えない事とサイドストーリー的なものが微妙な形で終わりを告げていることかな。

まあ、また見たら変わるのかも知れない。ただの一度見ただけでは全てを語れない映画です。最高!!
しちみ

しちみ