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秒速5センチメートルのMiiのレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
4.7
新海作品の中で個人的に一番お気に入りな作品。
なので、稚拙な文章ではありますが、しっかりレビューを書いてみます。笑

まだ心身ともに幼い貴樹の大人や大きな世界への憧れ、あかりが貴樹の世界に与える影響の大きさがまじまじと描写されている「桜花抄」。恋愛だけでなく、この先の将来を決めうる進路にも脚光を当てながら青春時代を描写している「コスモナウト」。そして冬の描写が印象的でどこか切ない気持ちになる「秒速5センチメートル」。

本作「秒速五センチメートル」では承認欲求が一つのテーマとして描かれているのではないかと見ていて感じました。本作が大好きなこともあり文庫版も拝読し比較参照しましたが、小説版「秒速5センチメートル」では、「その一言だけが、切実に欲しかった。(中略)ずっと昔のあの日、あの子が言ってくれた言葉。貴樹くん、あなたはきっと大丈夫だよ、と。」と記されています。貴樹は会社で実力を認められ、恋人もおり一見なんの曇りもない様に見えるが、彼にとってそれは自分自身ではなくずっと本当の自分の存在を認め受け入れ保証してくれる存在を求めていたのではないか。また、小説版の桜花抄に「自分のことを分かってくれる誰かがこの世界にひとりだけいるという感覚は僕たちを強くした。」 との記述があり、この記述からも彼が自分を認めてくれる存在を求めていたことは明らかだ。これは貴樹と明里だけでなく、花苗も愛という形ではあるが自分を認めてくれる存在を欲していたという点では同じだとおもいます。

目まぐるしく変動する現代は昔と比べ、大都市に暮らす人が増え人間関係が希薄になった。自分を見失いやすく、漠然とした不安を抱えている人が多い。実際に私もその一人だと本作を見て、改めて自覚しました。

この映画はたった60分間のアニメーション作品でありながらも風景や描写などからドラマの様な現実味を感じられかつ、その様な時代に生きる人々が自然と貴樹に感情を重ねてしまうのが本作品の最大の魅力だと感じました。
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