三上マナ

巴里のアメリカ人の三上マナのレビュー・感想・評価

巴里のアメリカ人(1951年製作の映画)
3.8
ミュージカル映画のレジェンド、ジーン・ケリーの「雨に唄えば」に並ぶ傑作。
美しきパリを舞台に、画家を目指すアメリカ出身の男と、彼が出会うパリ女性とのロマンスを描く。
複雑な三角関係や、複数の男女を交えた大人の恋愛要素はありつつ、なんていったってミュージカル!タップ、ジャズ、バレエ、ワルツといったダンスシーンはもちろん、歌もオーケストラもてんこ盛りの賑やかで楽しい作品だ。この時代、ミュージカル映画は大衆の人気ジャンルの一つで、当時の人たちがどれだけ熱狂したかの想像が尽きない。後の「紳士は金髪がお好き」や「ララランド」といったミュージカル作品にも少なからず影響を与えているのは確かだ。
ラスト18分のバレエシーンは非常に素晴らしい。主人公の愛への葛藤や、願望といった内面を鮮やかな色彩の渦と華麗な音楽とダンスに乗せて描き出す…台詞もなく、抽象的なシーンだけに、なかなかその魅力を捉えにくいという人もいるだろう。だが、そのスケールと卓越した技術には多くの人が目を奪われるに違いない。現代ならCGなどで合成できる技術があるが、1950年代にはまだそんな技術は生まれていない。そんな中、これだけの規模、これだけの群衆とセットによって、豪華絢爛な場面が生み出されていたことに深い感銘を覚えた。ラストの締めくくりについては、なるほどララランドのラストが好きかどうかで賛否が分かれそうだなとちょっといじらしい気持ちになる。分かる人とぜひとも語ってみたい。
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