「チャーリー・シーンの「ウォール街」のセリフを知ってる?「俺は何者なんだ?」当時は馬鹿にしたけど、今は分かる気がする」
ロジャー・グリーンバーグ、40歳。リップステックが欠かせない彼は、強迫神経障害を患い入院したことがある。今でも不安に襲われることがあり、薬を飲んでいる。しかし彼は、そうと見られたくないこだわりがある。
ベトナム旅行中の弟の家に、犬小屋を作るため、普段住むNYからLAまで大工道具を持ってアメリカン航空でやってきた。
彼は家に着いてすぐ、アメリカン航空に苦情の手紙を書き出す。
「アメリカン航空様。苦情は趣味じゃない。シートピッチにはまだ我慢できる。問題は狭さではなく、シートについてるボタンだ。押したからにはリクライニングすべきだ。これはNY発LA行き41便、26Cに限らない」
15年前ぶりのLA。ある出来事をきっかけに、この場所から離れていた彼は、昔の仲間であるアイバンに連絡をする。
久しぶりに会ったアイバンにNY市長に対するクラクション騒音郊外の苦情を聞かせる。
「市長様。NYをのみ込む騒音には市民としてうんざりです。任意の交差点に警官を置けば、犯罪の発生が抑えられるうえ、クラクションも減る。騒音公害が減って、地球にも優しい。車社会のLAで可能なら、NYでも可能だ。比較的最近州となったハワイでは、クラクションの使用を法律で禁じている。環境問題に共鳴されますよう」
アイバンは冬の髭を生やし、酒を辞め、アーノルド・パーマーのアイスティーとレモンーを好物にしている。
ベラーがバーベキューをしているから行かないかと誘われたけれど、行きたくないロジャーは映画の「マネキン」や「ガン・ホー」を観ようと提案するが、今になって?と返されて、結局行くことになる。
ベラー宅への道すがら、アイバンは自分が抱える別居中の妻や息子のビクターの話をするが、ロジャーは全く興味を示さない。
ベラー宅は豪華で、大勢の人と子供たちでいっぱいだった。いい映画がやっていないとか、好きな曲がスタバで流れてるとか、悪夢のようだ、来なきゃよかったと愚痴を吐くロジャー。
当時のノリがわからず見た目を弄るベラーに元彼女で離婚検討中のベス、15年ぶりの再開をした面々との会話はどれも噛み合わない。周りを見ても自分の居場所がなく、汗を書きながら思わず空を見上げてしまう。
疲れて家に帰ってきたロジャーはスターバックスへの苦情を書きだす。
「スターバックス様。ファストフードに文化を、という貴社の試みはほぼ成功です。ただそれ以外のところが最悪だ」
筆が乗らないロジャーは手元にあったフフローレンスという弟のアシスタントに電話する。
「飲まないか」
車がない彼は近所にあるバーはイマイチという彼女の車に乗せてもらい、彼女のいうカルバーシティに向かう。
しかし、バッグを忘れたというので、年齢確認されるからと、フローレンスの家に戻る。
金曜のバーはLA版の田舎者でいっぱいといい、フローレンスの家で飲もうとするロジャー。コロナビール1本をを二人で分けていたら、キスをしてしまう。
40代のロジャーと20代のフローレンス。二人の恋と、大人になれないロジャーの人生。この二つの視点が展開されていく。
感想
昔の失敗を引きずって大人になれない男。どうしようもなく、嫌な奴のように見える。でも、同じように病気になっている犬や、薬物依存になっていたアイバンには、彼なりに心を開いている。
フローレンスを好きになったのも、若いからというわけではなくて、彼女の歌っている姿に一目恋に落ちたから。彼女のために何かしたいという気持ちがあることもわかる。
当時の若者への警鐘が鳴らされているようなセリフもあり、テーマとなる世代間ギャップもよく伝わる。余裕があるように見せる、繰り返ししか言葉を使わない。など
相変わらず会話劇は小気味よく進み、知識のひけらかしが少ない分、少しだけ宙に浮いているような作品になった。
フローレンスはおっちょこちょいだけど、母性を感じる優しさとキュートな印象が強くて、彼女のことをもっと知りたいと思った。
車のシーンが多く、そこで話される本音も多くて、最も集中せずに言葉を話せる空間は車の中なんじゃないかと思った。
面白かった。
○プロットポイント
・マーラーが動かない
(悪くなる兆候)
・コカインを飲む
(自分をぶち壊す)
○印象に残ったシーン・セリフ
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