映画おじいさん

怒りの孤島の映画おじいさんのレビュー・感想・評価

怒りの孤島(1958年製作の映画)
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ヤンチャ坊主たちが呑気に小船で島に向かうイントロから一変、島には密漁者の死体が転がり、田舎者まるだしな島民たちが「(殺しても)潮が強いから警察は島まで来ねえよ」とのたまう無法地帯で驚愕。
ここで閉ざされた空間で培養されてしまった狂人たちの話だと気づく。

鶏の檻みたいなところに病気の少年を入れてなぶり殺し……とにかく人身売買で買った少年たちを島民たちが畜生扱いしていてメチャクチャ恐ろしい。それが悪だとは誰も思っていない。
実話だというのも信じられないけど、文部省特選で学校で観せていたことがもっと信じられない強烈映画。

少年殺しの取調べで島民のひとりが「我々がやらされたことを次の世代にやらせることが何で罪なのか⁈」と怒鳴る場面では愕然。現代のブラック企業から戸塚ヨットスクールまでを支配する考え方のひとつがこの一言に集約されていると思う。人間は数十年くらいでは成長しないのですね。

よそから来た教師で子供たちの味方ながら頼りなさ過ぎな織田政雄がいつもながら素晴らしい。このキャラが同監督の『丼池』の織田政雄になるのではと映画オタクみたいなことを考えてみたり。

労働基準局が立ち入って万事解決ハッピーエンドになるとは誰が思うものか。公開当時の子供たちもそこまでバカじゃなかろう。お高くとまった役所に対する当て付け映画として受け取ったはず。

2000マニアックスやツインピークスとかにも通ずるところがあり、海外、特にアメリカ人が大好きそうな筋書き。というか何かにそっくりな気も。
とにかく現存するフィルムが今回上映のボロボロのしかないのは非常に残念。

晩年は生ぬるい喜劇ばかり撮った監督とは思えない容赦のなさ。『続・警察日記』と本作で久松静児も全部観なきゃならんなと兜の緒を締めました。