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ジャズ・シンガーのyoichiroのレビュー・感想・評価

ジャズ・シンガー(1927年製作の映画)
3.5
12月17日 ブルーレイで観賞
「世界初のトーキー映画」と呼ばれるが、音声入り映画はこれ以前にもあり、「トーキーを一般に広く知らしめた記念碑的映画」という方が正しいか。「ユダヤ人と芸能界」という、その後の時代には長らくタブー視されていたテーマを、自身もユダヤ系でユダヤ教の祈りの歌を歌う聖職者(劇中ではラテン語風にカントルと呼ばれている)の家系出身のアル・ジョルスン主演で描いた、自伝的内容。ジョルスンによる、顔を黒く塗って歌うために現在はタブーとなった「ミンストレル」芸も見られるのも貴重だ。
ストーリーとしては、親子の情と芸の世界の義理との葛藤という古めかしいものだが、ユダヤ人にとって、自らの出自と社会的に成功するための手段である芸能界との価値観の葛藤は、恐らく当時のユダヤ系の芸能人には身近な話だったのかもしれない。当時のアメリカのユダヤ人社会の様子もわかり、1920年代のニューヨークのユダヤ人街で撮影された映像も出てくる。
音声解説が製作当時の状況や背景、歴史的位置付けについて専門家が語っており、これを聞きながら観ると作品への理解が深まる。
映像特典には、アル・ジョルスンが黒人の扮装で歌う短編も入っているが、歴史的価値は兎も角、今だったらいわゆるポリコレ的にアウトでしょう。
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