くずみ

朧夜の女のくずみのレビュー・感想・評価

朧夜の女(1936年製作の映画)
3.8
シューマイを手土産に訪れる下谷のオジサン坂本武。何とも頼りになりそうだ。テンポのよい会話と、下町の小体な生活空間の相性の良さ。他人には道理を説けても、自分に降りかかってきたらそう割り切れないよなと思わせる、吉川満子と飯田蝶子のやり取りが深い。

“近頃のバー”の和洋折衷っぷりがすごい。和風の建具に囲まれて、芸者・半玉・ドレススタイルの女が給仕をし、椅子に腰掛けビール&ハイボール。BGMは長唄か。

本筋ではない個所にも、かつての東京の姿が満ちている。大川をゆく帆船、蕎麦屋の店員の声(かんだやぶ風)、牛鍋屋でコンパの学生達。映画はタイムマシンだ。
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