しらす

仕立て屋の恋のしらすのレビュー・感想・評価

仕立て屋の恋(1989年製作の映画)
3.8
とりあえずカーテンは閉めようと思った。
ああいう血の通ってなさそうな薄毛で上品めのキモおじさんから受ける好意ほど気持ち悪いものは無い。(そんな経験はない)更にどこか私の伯父に似ていて嫌だった。ボーリングがうまいところも
あと、風俗店がなんであんな氷で作った部屋みたいなのか気になった。寒そう。
不器用で女性経験がない中年男性が、美しい若い子に翻弄される様が滑稽すぎて切なくなった。それでも彼にとっては本物の愛に触れた少ない日々であり、彼女から幸せを受け取っていた。
特に彼女との距離が突如縮まる、階段トマトのシーンはすごく良かった。目の前でトマトが広がっているのに拾えずドアの前で突っ立ちながら、足元にいる女を感じて硬直しているイール。彼女からゆっくり距離をとり、部屋に入るも、すでに入り込んでしまっていたひとつのトマト。素敵!
移民ということだけなら、見えない空気のような疎外、差別だけに留まる場合もあるのかもしれないが、彼は人と関わりを持とうとせず、協調性がない。マイノリティのダブルパンチである。「僕のことを嫌いな人々に言ってくれ、僕も君たちが嫌いだ」というようなセリフがあった気がする。人に好かれようとするのがマジョリティというのは確かにおかしなものだなと思った。
彼は覗きを趣味とする変態おじさんで、一方通行の愛し方しかできない。嫌われて当然である。でも、信用だけはできる。そんな彼が次第に素敵に見えてくる不思議な映画だった。
しらす

しらす