このレビューはネタバレを含みます
小川、ヤマカガシ、蟬、坂道、雪化粧。
冒頭から岩代太郎さんのあまりに美しい音楽に切なさが込み上げます。
その切なさは物語の終り、
「文四郎さんの御子が私の子で、私の子供が文四郎さんの御子であるような道はなかったのでしょうか」
と誰にともなくこぼす福の微笑へ収束し、
涙がつと溢れました。
' お福さま ' の纏う白色の着物が綺麗でした。
福を見送った後。
ひとり小舟で黄昏れる文次郎が寝そべって、姿が見えなくなったところでエンドロールが始まるのですが、
その連なりが美しいなと感じました。
エンディングでは流れませんでしたが、
イメージソングである一青窈さんの『かざがるま』も、映画のワンシーンワンシーンが思い起こされ胸に沁みます。
『蟬しぐれ』は藤沢周平さんの原作小説がとても好きです。
小説では剣士としての文四郎の成長、
映画には登場しなかったもう一人の友人との友情も濃く描かれております。
架空の海坂藩に胸を熱くしながら、この物語に出逢えてよかった、としみじみ思うのでした。