半兵衛

ごろつき船の半兵衛のレビュー・感想・評価

ごろつき船(1950年製作の映画)
2.7
テンポはいいし何より大河内伝次郎の年齢を感じさせないチャンバラを見れるのは嬉しいけれど(スピードでは勝新&若山兄弟には劣るけれど人を本当に斬っているような刀の捌き方が凄い)、舞台となる松前(北海道)という舞台設定が単なる飾りつけ程度で中身は密書や女性をめぐる普通の娯楽時代劇だしアイヌはインディアンみたいな扱いになっているのが不満。

終盤の爆弾に火が着きそうな中でのチャンバラは結構な迫力だけれど、導火線が長すぎて緊張感がだんだん失せてくる。そして爆弾意味無かったじゃないかという展開に。

それでも細部まで作り込まれた大映美術の素晴らしさや、豪華役者陣の安定した演技によりそれなりの出来映えに仕上がっているのがさすが大映のアルチザン森一生監督の仕事だけある。ただお話は菊島隆三&成澤昌茂という名シナリオライターが作ったとは思えないほど普通。

ヒロイン役には相馬千恵子&若杉紀英子(嘉津子)という後にお岩さんを演じる二人が共演しているのが興味深い。あと加東大介が恩ある商人の娘を助ける盗賊という美味しい役を好演するがすぐに退場するのが残念(しかもそれに対する仲間のリアクションは薄め)、その代わりに悪役ポジションの多い上田吉二郎が主人公たちの仲間に加入する。

ちなみに1820年という舞台設定になっているが、その直前まで北海道にロシアの船がたびたび侵入して一時は戦争寸前までに陥りながら高田屋嘉兵衛の尽力により事態の悪化は回避したものの緊張感は依然続いている状態なので悪党と家老が悪巧みするなんてそんな悠長なことはしていられなかったりする。そして幕末国防論の一貫として徳川斉昭といった尊皇派がロシアに狙われている北海道や北方領土を守るべく詳細な調査を幕府に要請、すでに自ら北海道に赴き調査をしていた松浦武四郎(この人アナーキーでアウトロー、でも弱者には優しいというショーケンや渡瀬恒彦主演でドラマにしたらぴったりな偉人だったりする)が正式に調査して彼の子細なデータが現在の北海道を造る基礎となっていく。
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